去年7月、札幌市の繁華街ススキノのホテルで、当時62歳の男性が殺害されて首を切断、頭部を持ち去られた事件…殺人などの罪で起訴された親娘3人のうち、1日午後、母親の2回目の公判に父親が出廷、遺族に謝罪した上で「警察に娘を突き出すのは、裏切る行為になると思った」などと語りました。
起訴状などによりますと、札幌市厚別区の無職、田村瑠奈(るな)被告30歳、父親で精神科医の修被告60歳、それに母親で無職の浩子被告61歳の親子3人は、去年7月、札幌市のススキノのホテルで、当時62歳の男性が殺害されて首を切断、頭部を持ち去られるなどした事件で、それぞれ下記の罪に問われています。
■田村瑠奈被告=殺人、死体損壊、死体領得、死体遺棄
・被害男性の首を、刃渡り約8.2センチの折りたたみナイフで何度も刺して殺害
・殺害後、ノコギリなどで首を切断
・頭部をキャリーケースに隠し、修被告が運転の車に乗って自宅まで運ぶ
・刃物などで皮膚を剥ぎ取り、眼球などを摘出
・その様子をビデオ撮影することを企て、浩子被告に依頼
■父親の修被告=殺人ほう助、死体損壊ほう助、死体領得ほう助、死体遺棄ほう助
・殺害目的などを知りながら、ノコギリ2本、キャリーケースなど12点を購入して瑠奈被告に渡す
・犯行後の瑠奈被告を自宅まで運び、男性の頭部を隠すことを容認
・浩子被告を介して頭部損壊の様子のビデオ撮影の依頼を受け、実行
■母親の浩子被告=死体遺棄ほう助、死体損壊ほう助
・被害男性の頭部を瑠奈被告が自宅に隠すことを容認
・瑠奈被告から頭部損壊の様子のビデオ撮影を求められて容認、修被告に実行を依頼
6月4日に札幌地裁で開かれた浩子被告の初公判で、浩子被告は「頭部の損壊を知ったのは、家に持ち込まれた後で、知った時には、すでに浴室にありました。あまりに異常なことだったので、娘に対して何も言えず、とがめることもできず、認めることもできず、何も言えませんでした」と死体遺棄ほう助の起訴内容を否認。
さらに、ビデオ撮影についても「具体的に何を撮影するのか、知らされていませんでした。とても耐えられなくて、助けを求める気持ちで夫に撮影を依頼。犯罪を手伝う意思は全くなく、損壊を手助けするつもりも全くなかった」と、涙ながらに死体損壊ほう助の起訴内容も否認しました。
弁護人も「浩子被告は被害男性の頭部を瑠奈被告が自宅浴室に置き続けたことを認識していたが、容認するような発言も一切しておらず、ビデオ撮影しながら頭部を損壊する計画についても、抽象的に撮影を修被告に依頼しただけだ」などとして、無罪を主張しました。
このあと、検察と弁護人、どちらも裁判員裁判となる瑠奈被告と修被告の公判も見すえて、いびつな親娘関係、瑠奈容疑者が男性を殺害した動機などについて指摘。
そこで一致したのは、瑠奈被告が女装していた被害男性に避妊具なしで性交されるなどし、トラブルになったことが事件の発端である点。
検察は、その怒りなどから、殺害だけでなく、もともと人体に興味があった瑠奈被告が遺体を解体して弄ぶことを企て、修被告も容認して協力と指摘。
これに対し弁護人は、修被告の無罪主張を視野に、両親には瑠奈被告と被害男性がSMプレイをするという認識しかなく、殺害は、瑠奈被告が自宅に頭部を持ち帰って初めて知ったなどと主張していました。
こうして迎えた1日午後の浩子被告の2回目の公判、修被告がカーキ色のパーカを着て出廷、やつれた様子を見た浩子被告は、涙を堪えきれず、ハンカチで顔を拭いました。
「遺族に言葉は?」と問われると「言葉では言い尽くせませんが、取り返しのつかないことをした。大変、申し訳ない」と謝罪。
そして、下記のように証言しました。
■修被告の証言
・2日未明、ススキノから家に戻ると、娘から「首、拾った」と告げられ、初めて犯行を知った
・(理由は聞かなかった?)聞いていない
・(なぜ、警察に通報しなかった?)現場まで自家用車で行ってたから、すぐに娘が逮捕されるだろうと思った
・警察に突き出すのは、娘が抱えていた何かを抱えきれず、裏切る行為になると思ってできなかった
・今も娘は相当苦しんで、病んでるから、これ以上、娘を追い詰めたくなかった
・恐ろしくて、通報できなかったとは違う
・(浩子被告からの撮影依頼は覚えている?)正確なところは、覚えていません
・車で15分くらいの店舗で飲み物を2つ購入、1つは瑠奈、1つは浩子に届けた
・(そのあたりでカメラを渡されたのでは)?流れを考えると、整合性がある
・(瑠奈被告が殺害を言ったことは?)ないです
・(殺害の動機を聞いたことは?)ありません
・(尋ねないのは、なぜ?)本人が言わないことを、こちらから聞くことは頭になかった
・(瑠奈被告から骨折、あざなどの暴力は?)なし
・(瑠奈被告の暴力が怖いと思ったことは?)ないが、瑠奈の精神が追い詰められるのが怖い、心配というのはあった
・(瑠奈被告に支配されている奴隷の意識は?)娘の心がこれ以上壊れないように行動選択していた
・(瑠奈被告が同級生に馬乗りになった報道、聞いたことは?)ありません
・(暴力的なことはあった?)同級生とのトラブルは記憶にない
・(逮捕時は寝る場所がなかったと思いますが、それはいつ頃から?)10年ぐらいかけて、ここ数年で強まった。じわじわ強くなってった
・(小学校から事件まで、親以外への暴力は?)ありません
・(動物を殺したことは?)ありません