最近、大きな話題となっている「GX」ですが、6月、北海道と札幌市が「GX金融・資産運用特区」に指定されました。
GXとは「グリーントランスフォーメーション」。自然エネルギーを表す『グリーン』に『トランスフォーム(=転換する)』という意味の言葉です。
つまり、二酸化炭素を排出する化石燃料から、風力や太陽光などの自然エネルギーへの転換を意味します。
英語圏では、TransをXと省略するので、GTではなくGXと呼ばれています。
このGXの特区に指定されたことで、私たちの暮らしはどう変わるのでしょうか?取材しました。
北海道の石狩湾で回る巨大な風車。
洋上風力で生まれた電力=再生可能エネルギーは、一般家庭や沿岸に集まったデータセンターで利用されています。
脱炭素社会に向けたGXの取り組みです。ガスメーカーの「エア・ウォーター」がGXのひとつとして開発したトレーラーは、移動式の水素ステーションです。
再生可能エネルギーとして注目される「水素」。
国は水素で走る燃料電池車を2030年までに、国内約80万台の普及を目指しています。
さらに、こんなものも。垂直型のソーラー発電システムです。
エア・ウォーターVERPA事業部 小玉尚広担当部長
「雪国だから傾斜タイプは雪が積もると冬の間、発電できない」
パネルを立てたことで、雪が積もりにくいんです。
さらに、通常のソーラー発電よりも設置面積が小さく、パネルの両面で発電できます。
エア・ウォーターVERPA事業部 小玉尚広担当部長
「ヨーロッパでは垂直パネルが植栽との協働に最も適したものという評価がされている」
北海道内では、広大な農地や牧草地などでの活用が期待されています。
地域の特性を生かして、再生可能エネルギーの技術を取り入れていくことがGXに求められています。
北海道とともに「金融・資産運用特区」に指定された札幌市は、世界から資金や人材、情報が集まる都市「国際金融センター」としての役割を目指しています。
その実現のために、まずは海外投資家向けのビザの発行や、会社設立の手続きに関するルールの緩和を提案しています。
札幌市 秋元克広市長(去年12月)
「やっぱりこれはエネルギー革命のひとつ。再生可能エネルギーに転換することで新しい雇用ができて、企業や産業が集積してくる。そのために多額のお金が必要になってくる。国内外から投資を得て、事業を進めていく。そのために金が集まりやすいマチにしていく必要がある」
GXで地域の経済は変わるのか?北海道大学の石井教授は…。
北海道大学大学院工学研究院(環境工学) 石井一英教授(6月19日)
「(通常は)経済に力を入れたら環境が悪くなる、あるいは環境に力を入れると競争力がなくなる、コストがかかるようになる。それがGXや再生可能エネルギーは経済と環境の好循環と言われていて、環境を『経済の柱』にしていくということ」
エネルギーの地産地消と、経済の活性化。その両方を実現するのが「GX金融・資産運用特区」の将来像です。
GX特区では、経済活動の中心が環境を保全する産業になります。
どちらかに重きを置いて、一方を軽視するのではなくバランスよく両立させながら、地域が発展していくことが期待されています。
では、GX特区の取り組みがうまくいったとして、私たちの生活にどんな恩恵があるのでしょうか。
【慶應義塾大学総合政策学部 保田隆明教授 解説】
「一攫千金のビッグチャンス」
北海道経済にとって起死回生のビッグチャンスです。産業が生まれることによって、「雇用を生み出す」「賑わいが創出する」「教育水準が上がる」と予想されます。
エネルギーがクリーンになることによって、クリーンなエネルギーを求めていろんな産業がやって来る。今の時代だとAIを使った事業が出てくることが見込まれます。
満島てる子さん
思っていた以上に未来に可能性がある取り組みなんだなと感じました。
渡部絵美さん
未来の北海道に関わる大きな産業になりそう。
堀啓知キャスター
課題はいろいろありますが、GXの理想が北海道で実現できるのか、今後に注目です。