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場所が狭くてしっぽを展示できない…新種の恐竜「カムイサウルス・ジャポニクス」が発掘されたマチで新たな博物館誕生へ 北海道むかわ町

北海道放送 2024年7月17日 18時58分

マチの至るところに恐竜の姿がある北海道胆振地方のむかわ町穂別。
ここで21年前に、新種の恐竜「カムイサウルス・ジャポニクス」、通称「むかわ竜」が発見されました。

現在、化石を展示する新たな博物館を造るためマチ一丸でプロジェクトを進めています。
目指す施設は、観光の目玉に?それとも?住民の思いを取材しました。

むかわ町穂別に住む堀田良幸(ほりた・よしゆき)さん。

2003年4月、郵便局員だった堀田さんは、散歩中にむかわ竜の化石を発見しました。

むかわ竜の第一発見者 堀田良幸さん
「この化石ですね、ねずみ色の地層が黒っぽくなっていたから、掘っていったら最初にこの部分が出てきて」

7200万年前に陸で生息していたハドロサウルス科の新種「むかわ竜」です。

2013年から2014年にかけて発掘作業が行われ、全身骨格は国内最大となる8メートル。

その8割が見つかり、注目を浴びました。

「むかわ竜」は2021年から穂別博物館に展示され、マチの誇りとして愛され続けています。

麻原衣桜記者
「今展示されているむかわ竜の復元骨格、スペースが足りないため、しっぽが外された状態となっています」

尾と大腿骨の実物化石と、しっぽが外された状態の全身骨格のレプリカのみの展示となっています。

そもそも、いまの穂別博物館は、1977年に穂別で胴体の大部分が発掘された「ホベツアラキリュウ」がきっかけで、1982年に建てられたため、展示スペースが狭いのです。

むかわ竜の化石を余すことなく展示するため、新たな博物館を作ろうと、2018年に始まったプロジェクトですが、その年の9月に起こった胆振東部地震や、その後の新型コロナウイルスの感染拡大によって一時中断。

おととしの2022年、再び動き出しました。

新たに出来る博物館は、穂別博物館の向かいに建てられます。

むかわ竜の実物の全身骨格の化石などが展示され、むかわ竜の歴史の全てを知ることが出来ます。

宮崎修(みやざき・おさむ)さんは、むかわ竜が発見された際、町の職員でしたが、穂別を盛り上げるために退職。

町内で初めて、恐竜のグッズのみを取り扱う店「恐竜ショップぽれぽーれ」を開きました。

恐竜ショップぽれぽーれ 宮崎修さん
「全国的に注目していただければ、もっとマチの方も盛り上がっていけるんじゃないかと思っていますので、子どもたちにも、たくさん見ていただければというふうにすごく期待しています」

北海道大学総合博物館の小林快次(こばやし・よしつぐ)教授など、専門家も参加するこの一大プロジェクトでは、定期的に説明会が開かれ、町民の意見も取り入れながら進められています。

むかわ町民
「化石クリーニングの体験が子どもたちにとても人気があるんですけど、新博物館でクリーニングを体験して、ゆっくりできるというような計画はあるのか」

穂別博物館 櫻井和彦館長
「外に広場がありますので、そういった場所を活用して人が集まる時期に、体験コーナーを実施していくというのは十分考えられると思うので、今後どのような形で何ができるのか具体的に考えていきたい」

北海道大学総合博物館 小林快次教授
「外に向けた発信、これは観光の部分だと思うんですけど、もう一つはやはり町民の皆さまに利用していただきたい。何度でも来て長くいていただきたいというのを感じています。一方で恐竜ファン、化石のファンの子どもたちや親子の皆さんには来てもらうと、いろんな情報が手に入るという結構『欲張りな博物館』を目指しております」

町民の夢が詰まったこのプロジェクト。実は、ここに来るまで、紆余曲折がありました。

新種の「むかわ竜」が発掘されたこのマチで今、進められている、新たな恐竜博物館を造るプロジェクト。

基本設計を請け負ったのは本州の業者でした。

その業者が提示した案は、博物館内にゲームコーナーを設けるなど、エンターテインメントに特化しており、博物館というより娯楽施設のようなものでした。

町は案を受理したものの、納得しない町民が多く、現在は本州の業者にかわり、北海道内などの別の業者らが実施設計を作っています。

むかわ町 竹中喜之町長
「観光客目線に偏るのではなくて、町民の皆さんが利用しやすい施設を願いたい。こういったところでの意見要望というのは(町民から)出されています」

町民も加わって作られた「穂別博物館未来会議」。

観光客を増やしたいという思いはもちろんあるものの、何よりも大切にしているのは「町民に愛される場所づくり」です。

穂別博物館 櫻井和彦館長
「むかわ町にたくさんの人が足を運んでほしいなっていうのはもちろんあるんですけど、学校教育では今まで以上に活用してもらいたいと思っていますし、地域の方にもぜひ足を運んでいただいたり、できれば展示、化石だけじゃない部分でも、いろんな形で活用してもらえたらと願っている」

むかわ竜の第一発見者 堀田良幸さん
「レプリカだったら立体的な構造がはっきり分かるということと、7200万年前の地層で出た本物の骨格が陳列される。両方見れるということをかなり楽しみにしています」

7200万年前の白亜紀と今を生きる町民を結ぶむかわ竜。

新たな穂別博物館は、大きな進化を遂げ、2026年の春にオープンする予定です。

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