Infoseek 楽天

「治療するだけでなく、社会に送り出すまでが自分の仕事」脳神経外科医が目指す“いけまぜ” みんながまざりあう「夏フェス」で生きる力を育む 北海道富良野市

北海道放送 2024年8月8日 19時17分

「もっと外に出たい」「自由に活動がしたい」障がいのある子どもたちのそんな思いをかなえようと、1997年から北海道で毎年夏に開かれているイベント「いけまぜ夏フェス」。

“いけまぜ”とは「いきるものみんながまざりあう」という意味の造語で、障がいのある人もない人も、参加者みんなで同じ時間を共有して理解を深め合おうという1泊2日の催しです。

これまで約20の北海道内のマチで行われてきましたが、今年は、「磨け、そして輝け!」をテーマに、8月3・4日、富良野市で開催されました。

障がいのある子どもたちとその家族、それに地域の人など約850人が参加し、凧あげやシャボン玉などさまざまな体験ができるスタンプラリーやコンサート、打ち上げ花火などを一緒に楽しみました。

まばたきを1回して「楽しかった」と話してくれたのは、北広島市から参加した下田詩珠(しずく)さん(16)。

細胞内のミトコンドリアのはたらきが低下し、脳や筋肉などに症状が出る難病、ミトコンドリア病です。

「いけまぜ夏フェス」にはこれまで10回以上参加していて、父親の耕司さんは「家族にとって夏の一大イベント。来るたびに友人が増える」と話します。

「凧揚げ、ヨーヨーすくい、めんこが楽しかった」と教えてくれたのは、苫小牧市に住むダウン症の泉樹生(いずみ・たつき)くん(10)です。

父親・茂樹さんと母親・真樹さんは「のびのびと遊べるし、同じ境遇の人たちに会えるのもうれしい」と感じています。

樹生くんのサポーターとして参加した、地元の富良野緑峰高校3年の森田晴稀さん(17)は、「ボランティアは初めてだったが楽しい。こういうイベントはいいと思う」とすっかり打ち解けた様子でした。

小樽市から参加した吉村こころさん(10)は、染色体異常から起こるスミス・マゲニス症候群という難病です。

母親の美香さんは「ふだんの生活では、ハンディキャップがあると、コミュニケーションが難しかったり居心地が悪いと感じたりする場面もある。でも、この場所に来ると、障がいがあっても特別じゃなく、当たり前の場所に感じられて心地がいい。携わる人の温かさが感じられる場所」と参加の理由を話します。

ミニコンサートでは、開催地、富良野市出身で、全盲の双子の兄弟、中村泰騎さん(23)と翔綺さん(23)らが、ボイスパーカションなどを披露しました。

9歳のころから参加している「いけまぜ夏フェス」が生きる力になっているという2人。力強い歌声を響かせて、会場を盛り上げていました。

時間が経つにつれ、障がい児とその家族(ラベンダー)、サポーター(ピンク)、実行委員(緑)と3色のTシャツの人たちは自然にまざりあい、会場には、いつのまにか“いけまぜ”の空間が広がっていました。

「いけまぜ夏フェス」を主催する、NPO法人「障がい児の積極的な活動を支援する会にわとりクラブ」の高橋義男理事長(75)は、脳神経外科医として、たくさんの子どもたちの命を救ってきました。

「病気を治療するだけでなく、子どもたちを社会に送り出すまでが自分の仕事」という強い思いのもと、家の中に閉じこもりがちだった障がいのあるこどもたちとその家族が社会に混ざり合うきっかけを作りたいと、「いけまぜ夏フェス」の開催を25年以上続けてきました。

長年の活動に少しづつ手ごたえを感じながらも、「社会はまだまだ問題だらけ…」と話す高橋理事長。

障がいのある人もない人も、誰もが少しずつ助け合って生きるやさしい社会の実現を目指して、活動を続けていくつもりです。

来年2025年の「いけまぜ夏フェス」は、北海道京極町で開催される予定です。

この記事の関連ニュース