10月の衆院選で、「手取りを増やす」を看板に掲げた国民民主党が、若い世代を中心に支持を得て、大きく議席を伸ばしました。これを追い風に「103万円の壁」を178万円に引き上げを主張し、各党と駆け引きしています。この「103万円の壁」をめぐる現場の声を取材しました。
北海道札幌市でお勤めの方にはおなじみ、お弁当の「日信」です。
創業から半世紀、手ごろでおいしい弁当で、働く人のお腹を満たしてきました。
1日およそ2万食もの弁当を作るのは、130人のパート従業員です。
日信 松村貴洋 社長
「パートさんには本当に感謝していてパートさんがいないと、お弁当を作れない」
おいしさを支えるパートの皆さん。年末が近づくと気がかりなのが…。
30代
「いまギリギリなので調整して働かないと…」
70代
「“103万円の壁”があると、時給が上がってもそのぶん働けなくなるから」
103万円の壁です。年収が103万円を超えると所得税が課税される、ボーダーラインのことです。
もっと働いて稼ぎたいのに「103万円」を超えてしまうからと、泣く泣く勤務時間をセーブ。なんて経験した方も多いと思います。
この「103万円の壁」。経営者にとっても高い壁のようで…。
日信 松村貴洋 社長
「年末になってきて(勤務)時間が詰まってきて調整で休まなくてはならない。忙しい時期に人がどうしても欠けてくる」
ただでさえ人手不足の中で、年末のかき入れどきに勤務に入るのを断られる、いわゆる「働き控え」は悩みの種です。
国民民主党 玉木雄一郎 代表
「私たちは"103万の壁"の問題をこれを今回絶対にやりたい」
10月の衆院選。「手取りを増やす」を看板に掲げた国民民主党が、若い世代を中心に支持を得て、大きく議席を伸ばしました。
これを追い風に「103万円の壁」を178万円に引き上げを主張し、各党と駆け引きしています。
引き上げが実現した場合、パート勤務者だけではなく、働く人のほとんどが「税金がかかる」部分が減るため、「手取り」が数万円から数十万円増える可能性があります。
物価が高騰するなか、これは朗報なのでは?街の人に聞くと…。
僧侶(50代)
「みんなの手取りが多くなれば、景気がよくなって国の税収が結果的に増えるかと思っている。どんどん還元して景気がよくなってほしい」
専門学校生(10代)
「1人暮らししているので、生活費や遊ぶお金に回したい。早く引き上がってほしいと思う」
歓迎の声が多く聞かれた一方で、こんな声も…。
サービス業(50代)
「いまの特別控除のような感じで利率を年収に応じて改定するとか。そこも調整しないと単純に103万円を178万円に上げるのはちょっと乱暴」
サービス業(30代)
「全体的な経済効果との試算がリアリティーをもって見られないので示してほしい」
◆「103万円の壁」とは何か
年収「103万円」というのは、所得税が課されるかどうかのボーダーラインです。年収がこれ以上になると所得税が課されるため、アルバイトなどの勤務を控える人が出てきます。これを「103万円の壁」と呼ばれています。
国民民主党は、このラインを「178万円」に引き上げると訴えています。所得税の課税を気にせずに働けることで、結果的に「手取りを増やす」と訴えています。
「178万円」という金額は、およそ30年間での最低賃金の引き上げ率に基づいています。
◆課税ラインを178万円にすると
政府の試算では、所得税の課税ラインを「178万円」に引き上げることで、国の税収がおよそ7兆6000億円減るとされています。
◆「壁」となるのは所得税のほかにも
企業の規模によりますが、年収「106万円」または「130万円」になると、社会保険料を支払わなくてはならなくなり、手取り収入が減ってしまいます。
政府のホームページによると負担額は年収106万円の場合は約16万円、年収130万円の場合は約27万円です。所得税のボーダーラインを「178万円」に引き上げても、その前にさらなる壁があり、根本的解決にはならないことに。
自民党と国民民主党は、「103万円の壁」の見直しなどの経済対策について、週内にも協議を始めることにしています。