人口の減少はいま、北海道全体の課題です。この問題の解決に向けて、北海道の各地で活躍しているのが『地域おこし協力隊』です。
今年10月、4人の隊員を迎えた知床に近い清里町では、隊員たちが、任期後も町に住み続けることを願って地元出身の女性も挑戦を始めました。
雄大な斜里岳を眺めながらのランチ。集まったのは『地域おこし協力隊』に応募している若者たちです。
最終面接を前に、遠くは福岡県から、オホーツクの清里町にやってきました。
清里町『地域おこし協力隊』に応募 大野恵さん(30)
「私は登山が好きなので、登山ガイドのプロジェクトでエントリーをしている」
北海道清里町は、知床半島の根元に位置する、人口およそ3700人の町で"神の子池"や"じゃがいも焼酎"が有名です。
2泊3日の現地訪問のプログラムには、マチの中心部や住宅の見学のほか、清里町民との交流の機会も設けられました。
こうした機会は、移住後に「イメージと違った…」とならないように、今回初めて開かれました。
企画したのは、岩崎風花さんです。
『地域おこし協力隊』受け入れリーダー 岩崎風花さん(29)
「100パーセントの魅力を伝えていくとか、そんな気持ちを込めての“清里100%”のブランディングで」
東京の大学で"地域活性化"について学んだあと、農業コンサルティング会社に就職。そこで、町おこしのアイディアがあっても、それを実現する人が地域にいないという課題に直面しました。
『地域おこし協力隊』受け入れリーダー 岩崎風花さん(29)
「提案を東京からするんじゃなくて、各地域にそれを回してくれる人材を育てていかないと、これって持続的じゃないなっていうのを思って…」
そこで風花さんは、生まれ育った清里町にUターンしてきました。現在は“地域おこし”に取り組むNPO法人の職員として、2人の子供を育てながら『地域おこし協力隊』を受け入れるリーダーをしています。
実はこれまでも、清里町は協力隊を採用していました。ただ、1人も定住に結びつかないという問題を抱えていました。
清里町 古谷一夫 町長
「3年間、どのような形の中でサポートしていくのかというプログラムや、サポートの在り様など、具体的には見えないなかで暗中模索でやっていた」
清里町 本松昭仁 参与
「助言や協力や指導が少し欠けていたので、もしかすると(協力隊員が)孤立っていうか、そういったところもあったんじゃないかな」
10月、清里町には新しく4人の『地域おこし協力隊』が着任しました。
この日は、協力隊としてのこれからの活動などを、住民に知ってもらうためのセレモニーの日です。
4人の手元にあるのは、自分の特技や趣味が書かれた写真付きのトレーディングカードです。このカードを住民1人1人に手渡して、あいさつをします。
『地域おこし協力隊』の1人、浜田涼一さん26歳のカードには、自身のスキルに“英語のそれっぽい相槌”と記されていました。
(Q.英語のそれっぽい相槌…やってみてもらってもいいですか?)
清里町『地域おこし協力隊』浜田涼一さん(26)
「英語でなんと言ってるかわからないときに……“COOL”って言ったら流れるんですよ(笑)」
平日の夜、目標をはるかに超える100人がホールに集まりました。
清里町『地域おこし協力隊』岩崎如月さん(25)
「大学1年生から6年間、卒業してからも2年間、子どもの居場所づくりを目的としている団体に所属していました」
清里町『地域おこし協力隊』大野公大さん(37)
「ウィンタースポーツもやっています。主に私はスキーが"好き"で…スキーがすきーです!」
清里町民の女性
「行動力というか、パワーに満ち溢れている感じで、私もなんか、一緒に頑張りたいなっていう風に感じました」「ちょっとなんか一緒に飲みたいなと思いました」
清里町民の男性
「四者四様ですごく楽しみですね」
協力隊をサポートする中で、岩崎風花さんが大切にしているのは“住民を巻き込むこと”です。
『地域おこし協力隊』受け入れリーダー 岩崎風花さん(29)
「私自身が清里大好きなので…ここに住んでる人たちが、こんなことやりたいと抱えている思いを、無いものにしたくないというか」
「やりたいと思っているけれど、諦めていることとかあれば、ぜひ実現していきたいし、実現の過程でも、いろんな人を巻き込んで、面白おかしくやっていきたいみたいな思いがすごくあります」
北海道オホーツク地方の清里町に『地域おこし協力隊』として、新たに着任した4人。
セレモニーが終わり、ひと段落…かと思いきや、翌日から、彼らの活動はスタートしていました。
着任セレモニーの翌日、4人の姿は裏摩周展望台にありました。大野恵さんはこれから、登山自然ガイドとして活動します。
清里町『地域おこし協力隊』に応募 大野恵さん(30)
「いきますか~!」
一同「お願いします~」「恵さんのガイドが、タダで受けられるのも、いまのうちだ、いや本当に」「まだなんも知らないけどね」
北海道東トレイル。釧路・阿寒摩周・知床をつなぐ、約410㎞にわたる道で、ガイドや住民が整備し、今年10月ついに、1本に繋がりました。
トレイルを歩くこと、約1時間。見どころポイントに到着しました。
一同「えーすごっ!ここが…」「絶景ポイントです!」「おー!」
目の前に広がる根釧台地に、息をのむ4人。
清里町『地域おこし協力隊』浜田涼一さん(26)
「やーっほー!!…かえって来ている?」
清里町『地域おこし協力隊』に応募 大野恵さん(30)
「かえって来ている!すごいすごい!」
「清里町の自然環境って凄いんだということを知ってもらって、帰って来てもらえる、そういうムーブにつなげられるようなお手伝いをしたい」
『地域おこし協力隊』受け入れリーダー 岩崎風花さん(29)
「町を継続させていきたいとか、もっともっと面白い地域にしていくための、何か仕事ができないかなっていうのが原点であり、自分の一番、いまも持ってる夢っていうか、やり甲斐につながっているのかなって思います」
住民1人1人の“やりたいこと”を実現できる町づくりのために、風花さんと協力隊の挑戦は、始まったばかりです。
岩崎風花さん
「これからも頑張るぞー!オー!」
森田絹子キャスター)
『地域おこし協力隊』は、将来的には“定住を目指す”制度です。任期は3年、この間の給与や活動費は、最終的には国の予算で賄われます。
堀啓知キャスター)
一方、その任期中に、過疎化の地域で、例えば“登山ガイド”や“地域情報の発信”のような、定住のための仕事を見つけなければならない、もしくは自分で作っていかなければならない…この辺りが課題になっています。
さらに“都市部の若者”と“地方に住む住民”の認識のズレもあると指摘され、今回取材した岩崎風花さんのような、都会と地方の双方を知るUターン経験者などの調整役の存在が、一つのカギになるかもしれません、。
その岩崎さん、新たに“仕掛け人ラボ”というプロジェクトを立ち上げて、協力隊員や町民、地元企業などが一緒になって、地域おこしを仕掛けていく場を作り出していこうとしています。