83年前、日常を描いた絵が戦時中の思想に反するとして、北海道旭川市の学生らが逮捕された「生活図画事件」。
彼らが、その後の人生の中で描いた作品を集めた展覧会が札幌市で開かれています。
怒りのまなざしで静かに前を見つめる青年。
こちらは余生を過ごした北海道十勝地方のタウシュベツ川橋梁が色鮮やかに描かれています。
札幌市のギャラリーで先週から始まった「師弟三人展」です。
菱谷良一さん(102)
「懐かしい~」
「師弟」とは太平洋戦争の直前「生活図画事件」で逮捕された菱谷良一さんと松本五郎さん、そして2人が在籍する美術部の顧問だった熊田満佐吾さんのことです。
1941年、菱谷さんらが描いた日常の絵が「政府の考えを否定する」などとして、治安維持法に反したとみなされ、計26人が逮捕された「生活図画事件」。
展覧会には菱谷さんら3人が出所したあとに描いた44作品が並びました。
自由を制限されていたからこそ輝いて見える何気ない風景を描いた作品たちです。
12日、ギャラリーに足を運んだ菱谷さん。事件から83年が経ったいま、当時を知る「最後の生き証人」となりました。
菱谷良一さん(102)
「生きていて声を大にしてPRするのが使命だと思っている。それまで応援して」
菱谷さんは毎年5月、治安維持法に基づいて不当に逮捕された人たちへの謝罪や賠償を国に求めていて、2025年も参加したいとしています。
弾圧を経験した青年たちが、自由と平和を追い求めた力強い作品が並ぶこの展覧会は、札幌市西区のギャラリー「北のモンパルナス」で12月24日まで開かれています。