冬の防災について考えます。記憶に新しいのが元日に起きた『能登半島地震』ですが、もし札幌市で大きな地震が起きたらどうなるのか…
札幌市がまとめた地震の被害想定によりますと、札幌市で直下型地震が発生した場合、夏は死者数が363人なのに対し、冬は凍死のリスクなどが増えるため死者数4911人と、夏のおよそ13.5倍まで増えると推定されています。
冬の災害にどう備えればいいのか。そのヒントは「ふだん使い」にありました!
貴田岡結衣記者
「結構あったかくてびっくりします」
段ボールベッドの上に設置された、1人用のテントに…
貴田岡結衣記者
「こんなにグツグツしていても、ほんのり暖かさを感じる程度」
”断熱実験”で使われているのは、独自開発された特殊な新素材。ふだん着として売られている防寒着にも使われています。
防災の専門家
「防災のためにそろえたものは、あまり役に立たない。身近にあるものが、災害時にいきるというものがたくさんあります」
ふだんから着ている防寒アイテムが、命を救ってくれるかもしれない。冬に備えるべき防災対策を「もうひとホリ」します。
宮形徹記者(おととし12月)
「紋別市中心部の市街地です。現在停電が発生しており、信号のランプが消えています」
紋別市民(おととし12月)
「うちはポータブルストーブがあるから、いいと思う。これが無いところだと大変…」
おととし12月、暴風雪に見舞われたオホーツクの紋別市では、送電線を支える鉄塔が倒壊し、市内全域のおよそ1万3000戸が停電しました。
避難所ではストーブと発電機が不足し、北海道は自衛隊に災害派遣を要請。防寒対策など、真冬の避難所生活の課題が浮き彫りとなりました。
そこで新たに考案されたのが…
日本赤十字北海道看護大学 根本昌宏教授
「これで、”テントon theベッド”と言われる。段ボールベッドの上にテントを作るということが完成です」
厳冬期の避難所生活で、低体温症の予防も期待できる『テントon theベッド』。
考案したのは、冬の避難所運営など寒冷地の防災について研究する、日本赤十字北海道看護大学の根本昌宏教授です。
6年前の「胆振東部地震」のようなブラックアウトが起きた場合でも、寒さをしのぐことができると言います。
日本赤十字北海道看護大学 根本昌宏教授
「床からの底冷えは冬の寒さ対策の中では、一番の大きな問題なので、床からの冷気を遮断しておき、かつウレタンマットが入っているので、さらにもう1つ遮熱をかけておくと暖かい空間をうまく作れると思い(考案した)」
『段ボールベッド』の上に、1人用のテントを設置するだけのシンプルな仕組みですが、「防寒」以外にも多くのメリットがあると言います。
貴田岡結衣記者
「本当にプライバシーを守るという点でもそうですし、このテント想像以上にすごく暖かくて、隙間風もスカートの影響か下から入ってこないんですよね。だから、すごく快適に過ごせると思います」
根本教授が所属する日本赤十字看護大学附属災害救護研究所は、去年7月作業服大手のワークマンと災害対策における連携協定を結び、災害時に役立つ商品の共同研究を進めてきました。
こうしたワークマンとの『共同研究』から生まれた”新素材”。それが、この『着る断熱材』です。
貴田岡結衣記者
「この沸騰したケトル、触ってみます。こんなにぐつぐつしていても、ほんのり暖かさを感じる程度で普通に触れちゃう」
この新素材を使ったジャケットは、抜群の断熱効果に加え、湿気も籠らず蒸れないのが特徴。
気温およそ10℃の屋外で防寒ジャケットを着ていない状態だと、16℃まで下がっていた記者の表面温度が、『着る断熱材』のおかげで20℃を超える状態に!このように体温をキープしてくれるんです。
こうした『防寒着』など、ふだん使いしている物が、特に冬の災害時には有効だと根本教授は言います。
日本赤十字北海道看護大学 根本昌宏教授
「防災のためにそろえたものは、あまり役に立たない。それよりも、ふだん使っている物を、そのまま災害の時にも使おうというほうが、とても簡単で使いやすくて、安全なだけじゃなくて、そこに安心感を生じることになる思います」
冬の備えで大切なのが『TKB+W』です。
どういうものかというと…
「T」はトイレ、「K」はキッチン、「B」はベッド。
この3つに加えて冬の災害時では、ウォームの「W」=暖房、つまり寒さ対策が欠かせません。
そこで根本教授は、冬の避難で備えたいものを次のように提案しています。
『防寒着・手袋・ニット帽・マフラー・オーバーズボン・冬用の寝袋・エアマット・上履き』
ふだん使っているものをそのまま使うのがオススメです。
また根本教授は、氷点下の中でも体温を保てるような服装を想像するようにしてほしいとも話しています。