「非常に重大な事故」
国の運輸安全委員会は、今回の事故をこう表現しました。
藤田忠士記者(11月16日午前9時過ぎ)
「貨物列車が脱線した現場です。車輪がレールから外れ、奥側へといってしまっています」
近隣住民
「(16日午前2時前に)シャーッというものすごいスピードで列車が行った音、今までにない音(がして、家が揺れた)。普通は(家は)揺れない。普通の貨物列車が通っても」
事故が起きたのは、北海道南部の森町、噴火湾沿いを走るJR函館線の森駅と石倉駅の間です。
16日午前1時40分ごろ、名古屋から札幌へ向かっていた貨物列車が脱線しました。
貨物列車は、機関車1両と貨車20両。
12両目よりも後ろの5両が、進行方向の右側に向かって脱線。
最も後ろの車両は連結がはずれ、30メートル離れた所に止まっていました。
運転見合わせで、16日の函館駅は混乱状態でした。
駅のアナウンス
「バスなど代行輸送につきましても、行わない見込みです」
利用客
「札幌に帰る予定が、終日運休で今どうしようかと」
旅行客
「旅行の日程を変えなければなりません。大変です。気持ちが落ち込んでいます」
現場は、道央と道南を結ぶ大動脈。
札幌と函館を結ぶ特急は、16日は運転見合わせ。
17日と18日は、札幌と長万部の間は、普段の11往復から4往復に減らして特急列車を運転。
長万部と函館の間は代行バスを運行していますが、利用者の不満は収まりません。
利用客
「初めてのことで戸惑った。携帯持っていても電話とメール以外操作できないのでどうしようと」
「仕事でニセコまで。何とか(きょう中に)行ければいい」
荒木颯太記者
「午前10時発の札幌から函館へ向かう高速バスです。急きょ予約された方もいて28席全てが埋まっています」
バスの利用客
「土日はバスが満杯で、月曜日(きょう)に2枚空いていた。大変だった。バスはこれしかなかった」
今回の事故は、なぜ起きたのでしょうか?もうひとホリします。
事故後、調査に入った運輸安全委員会が注目した現場があります。
「鷲ノ木(わしのき)道路踏切」です。
藤田記者(16日午後1時過ぎ)
「こちらは、脱線した貨物列車が通過した踏切です。真ん中に大きな穴が開いていて、踏板などが散乱しているようすがわかります。レールを辿っていくと、まるっきりなくなってしまっているんですね。欠損してしまっています」
運輸安全委員会 西本正人鉄道事故調査官
「いまの段階では、この辺りから脱線は始まった。レールが折れている状態になっている。それと脱線が関連あるか含めて“なぜ折れた”“いつ折れた”を含めて今から調査をしていく」
「鷲ノ木道路踏切」があるのは、貨物列車の後方、約600メートルの地点。
脱線の後は、この踏切のあたりまで続いていました。
そして、踏切内のレールには「1メートル以上の破断」と「幅1センチの破断」が2か所、見つかっています。
日本大学(鉄道工学) 綱島均特任教授
「それまでは正常に信号保安システムは動作しているので、ということは、この貨物列車によって、急激に(レールの)破壊が進展したと考えられる。そこのレールが物理的になくなることで、脱線がそこから始まった。例としてはそれほどないような事故」
鉄道工学が専門で、日本大学の綱島特任教授は、レールが破断した原因について、レールの“腐食”の可能性を指摘します。
日本大学(鉄道工学) 綱島均特任教授
「相当、腐食が進んでいたのではないか。この現場の踏切というのは、レールの底面が見えない状況。目視ではたぶん腐食を判断することは不可能だったのではないか。踏切で、しかも、水がたまりやすい環境があったのではないかと思う。腐食しやすい環境が特別この踏切で発生していたと。腐食が起こりやすい場所のレールの保守管理をどうやってきたのかが問題になる」
そして、18日午後4時、JR北海道は会見を開き、レールの腐食が脱線の原因の一つになった可能性が高いことを明らかにしました。
JR北海道 島村昭志常務
「当社としては、このレールの腐食が脱線の原因の一つになった可能性は高いと考えている。定期的に実施しているこれらの検査では、当該の損傷レール腹部の腐食状況を、把握はできていませんでした。レール内部で発生する傷、レール底部に発生する腐食に着目した検査をこれまで行っていましたが、レール腹部の腐食が先行して、レール損傷が発生するということは、予見をしておりませんでした」
JR北海道によりますと、
●破損したレールは
・1992年から使用
・10月6日に軌道検測車、12日に徒歩、13日列車から目視で点検し、異常はなかった
●レールの腐食が脱線原因の一つの可能性が高い ということです。
鉄道工学が専門の日本大学 綱島特任教授は「踏切というレールを確認しにくい場所で腐食していた可能性」を指摘しています。
JR北海道は、破断したレールや傷ついた枕木の交換のメドがついたとして、運転を見合わせている長万部と森の間を、19日の始発から運転を再開するとしています。