幼い命を守るため、食事に潜む危険を取材しました。
先週、1歳1か月の男の子が給食の「豚肉の炒めもの」をのどに詰まらせ、死亡していたことが明らかになりました。
株式会社アイグラン 橋本雅文 代表取締役
「ご遺族様に深くおわび申し上げます。大変申し訳ございません」
事故が起きたのは 、北海道札幌市の認可保育園「アイグラン保育園拓北」です。
株式会社アイグラン 西岡寿彦 部長
「(与えた物が)本当に適切だったかについては、今はまだ調査しています。(離乳食に関しては)本当にすごく個人差があるので。保護者とのやりとりが必要になってきます。その中でどこまで連携が取れていたかが大事になってくると思うので、そこを含めて確認をしているところ」
発生からすでに3週間以上が経っていましたが、繰り返されたのは「確認中」という言葉でした。
堀内大輝アナウンサー
「午前10時をまわりました。3回目となる保護者向けの説明会が始まっています」
保育園で行われた保護者への説明会でも…。
説明会に参加した保護者
「(説明は)テレビのままだっただけです。詳細がまだ分からないからっていう…」
(納得は?)
「いや、しないですよ。やっぱりこれからの経過を見ないと不安なままですよ!」
幼い命が失われた悲しい事故。
子どもの食事に潜む危険を「もうひとホリ」します。
札幌市から車で約1時間、北海道歌志内市の”認定こども園あおぞら”です。
園児34人を預かる長沢園長は、札幌市の事故は「他人事ではない」と言います。
歌志内認定こども園あおぞら 長沢栄子 園長
「家庭でも園でも、どこでもありえることかなと思った」
園児の給食は、園内で調理。
この日のメニューはカレーライス。
配膳前に毎食、園長自ら「検食」します。
歌志内認定こども園あおぞら 長沢栄子 園長
「とろみ具合がどうなのか、お野菜が固くないか、のどに詰まらせる心配はないか…。(食べて…)大丈夫です。お願いします」
給食の時間。
まず、お茶や汁物でのどを潤します。
食べ始める前に、「のどの通り」を良くするのです。
歌志内認定こども園「あおぞら」では、一人一人の園児に合わせた「大きさ」や「量」の食事を栄養士が盛り付けます。
そして、食べさせる直前、今度は保育士が子どもたちのようすを見ながら、食材を切ったり、つぶしてから食べさせたりする、念の入れようです。
歌志内認定こども園「あおぞら」9人の0歳から1歳児に、8人の保育士が対応。
さらに担当の園児も決めているといいます。
歌志内認定こども園あおぞら 長沢栄子 園長
「いつもいる先生が自分の目の前にいることで、(子どもたちが)すごく安心して、食事も生活もお昼寝のときもできると思います。きょう、この子ちょっと食べ進みが悪いから熱を測ってみるとか、せき込む場合には無理させないで軟らかいものにするとか、お湯を足して飲み込みやすい形にするとか」
万一に備え、食堂にも電話を設置。
また、職員室には消防直通の電話もあります。
歌志内認定こども園あおぞら 長沢栄子 園長
「(食べ物の)大きさや軟らかさについてはたくさんの目で、調理と検食する私と先生たちのたくさんの目で、段階を追って見極めていくのも大事なのかなと思いました」
こども家庭庁によると、「不慮の窒息」による死亡事故は、2022年までの5年間で「407件」。
約8割が、0歳と1歳の乳幼児です。
札幌市豊平区の保育園「ナ-サリーゆめの木」です。
0歳クラスでは、園児1人から2人に保育士1人。
1歳以上のクラスでは、園児3人から4人に保育士1人が昼食の対応をしています。
保育士
「かむのがうまくできなくてそのまま飲み込んでしまう子もいるので、口を見せて『ガシガシだよ』という動きを見せて、かむことを意識できるようにしたり、こまめに水をあげることもしている」
「もやし一つでも長さが長いのとかあるので、そういうのを見たらこちらで(食材を)短くしたり…。神経使います(食事の時間が)一番使うかもしれないですね。月齢が小さければ小さいほど…」
調理も食べさせる時も細心の注意をしていますが、これまでに、ヒヤッとした経験もあることを明かしてくれました。
堀内大輝アナウンサー
「これまでに"ヒヤリ"としたことは?」
ナーサリーゆめの木 安達美也子 園長
「開園してから一度ありました。リンゴだったのですがのどに詰まらせて、その場で(背中を)ポンと叩いたら(リンゴを)吐いたが、そのときが一番ヒヤリとしました」
もし、子どもがのどに食べ物を詰まらせてしまったら、どうすれば良いのでしょうか?
まずは、「背部叩打(こうだ)法」です。
■『背部叩打(こうだ)法』
●腕とひざの上に乗せて体を固定し頭を下に
●あご先を指で固定し、気道を確保
●手のひらで背中の中心をたたく
日本赤十字社北海道支局 永澤貴博 係長
「顎先を指で固定して気道確保をして、前腕と自分の膝の上に乗せて固定をしてあげて頭を少し下に向けます。叩く位置は背中の真ん中です。掌の厚い部分で叩いてあげます」
体験した堀内大輝アナウンサー
「実際にはもっと子どもは重いと思うので、首の気道を確保するのが難しい感じがしますね」
日本赤十字社北海道支局 永澤貴博 係長
「気道を確保していないと物がさらに詰まることも考えられるので、気道確保はしっかりしてもらいたい」
それでもダメなら、別の方法もあります。
■『胸部突き上げ法』
●ひざと腕で体を固定
●中指と薬指で胸骨の下半分を強く押す
●1分間に100~120回程度の速さ
日本赤十字社北海道支局 永澤貴博 係長
「『胸部突き上げ法』といって胸を強く押してあげる方法です。この時もひざと自分の腕で固定をして、中指と薬指で胸骨の下半分を体の厚さの3分の1程度の深さまでしっかりと押してあげます。押す速さは一分間に100回から120回程度と言われています」
体験した堀内大輝アナウンサー
「こういう感じですかね。小さいから不安になるというか、どこまでやっていいのかを知らないと難しいですね」
VTRで紹介した『胸部突き上げ法』は、力加減は難しいですが「骨が折れても助かる命を優先させるべきだ」ということです。
また、『背部叩打(こうだ)法』は、餅が詰まったときなど、大人にも有効だということです。
■『背部叩打(こうだ)法』
●患者の頭をできるだけ低く下げる。
●片手で胸部を支える。
●片足を患者の前に置いて支えるのが重要。
●乳幼児と同じように、肩甲骨の間を力強くトントン叩く
●5回叩いても出なければ『腹部突き上げ法』へ
■『腹部突き上げ法』
●患者の後ろから手を回し、へそより少し上にこぶしの親指側を当てる。
●もう片方のこぶしで瞬間的に斜め上の自分側に引き上げ圧迫する。
●できるだけ相手の背中と自分のお腹を密着させるのがポイント。
●内臓を傷める恐れがあるので乳児や妊婦にはNG。2歳以上向け。
※上記の2つの方法を5回交互に繰り返す
今回の事故を受けて、「救急法を知りたい」という問い合わせが数多く寄せられたため、日本赤十字社北海道支部では、12月20日、講習会を実施するということです。