先週、北海道森町で発生した貨物列車の脱線事故は、私たちの身近に隠れていた危険を浮かび上がらせました。
21日午前、北海道北斗市にある道南いさりび鉄道の踏切です。
藤田忠士記者
「道南いさりび鉄道の職員が、探傷機と呼ばれる機械を使って、目視では確認できない線路の異常などを検査しています」
先週、森町で発生した貨物列車の脱線事故を受けて国の指示で緊急に行われた「レールの点検」です。幸い、異常は見つかりませんでした。
先週16日、JR函館線で起きた貨物列車の脱線事故。その脱線現場から見つかった鉄の塊。腐食して、ボロボロ。バラバラになったレールです。
藤田忠士記者
「脱線事故があった踏切は、こちら山側から海へと抜ける下りの道の途中にあります」
貨物列車も。そして特急列車も、事故の直前まで、このレールの上を走っていました。
鉄道工学の専門家
「(レールの)腐食がここまで進んでいると、しかもそれを放置していた。それが一番の衝撃的なところですよね」
JR北海道 綿貫泰之社長
「(レール腹部の腐食を)全く予見できていなかった。これは反省しなければならない」
脱線事故があぶり出した『もうひとつのキケン』きょうは”もうひとホリ”します。
今回事故が起きたのは、北海道南西部の森町、噴火湾沿いを走るJR函館線の森駅と石倉駅の間です。
そして、脱線が発生したとみられるのが「鷲ノ木(わしのき)道路踏切」です。
藤田忠士記者
「真ん中に大きな穴が開いていて、踏板など散乱している様子がわかります。レールを辿っていくと無くなっているんですね欠損しています」
その脱線現場から見つかった鉄の塊。腐食して、ボロボロ、バラバラになったレールです。
これは、レールの断面を表わしたもの。上から順番に「頭部」、「腹部」、「底部」と呼ばれます。そして本来「腹部」は15ミリの厚さがありますが、事故現場のレールは薄いところで3ミリにまでなっていました。
藤田忠士記者
「踏切の近くにはご覧のように海や港がありまして、潮風による塩害も腐食の原因として考えられるかもしれません」
鉄道工学が専門の日本大学の綱島均特任教授は、レールが腐食した原因について塩害の可能性を指摘します。
日本大学(鉄道工学) 綱島均特任教授
「(腐食が加速された)浸食の原因は、明らかに塩害と言われるもの。塩分がレールに付着することによって、さびが発生すると、これがどんどん腐食が進んでいく原因になります」
現場の踏切のレールの設置は、30年以上前の1992年。
今年9月には「超音波探傷器」で検査が行われ、エコー画像に乱れがありました。
しかし、社内ルールで、レールの上からの目視で確認しただけで、敷板をはずしてレールを詳しく確認することはありませんでした。
JR北海道 島村昭志常務
「レール内部で発生する傷、レール底部に発生する腐食に着目した検査をこれまで行っていましたが、レール腹部の腐食が先行して、レール損傷が発生するということは、予見をしておりませんでした」
日本大学(鉄道工学) 綱島均特任教授
「当然ながら海沿いを走る、こういう地域には塩害が発生するのは当然、想定されるわけです。「予見できなかった」ということでは、ちょっと通らないと思いますね。当然、予見すべきことですよね。JR北海道の塩害が発生するのは、別に最近に限ったことではないですよね。そういった過去の知見とか経験とかが、十分継承されてきたのか。というところが疑問…」
実はレールの塩害については、JR東日本新潟支社が調査した論文を発表しています。
今から12年前=2012年のことです。
日本大学(鉄道工学) 綱島均特任教授
「その論文によれば10年間で4ミリ(レールの)腐食が進むと言われてるので、今回(事故が起きた踏切では)30年レールを使っているわけなんですけども、単純計算で言えば、12ミリ以上の腐食があってもおかしくはないということになると、今回の腐食量とも、かなり符合する」
JR北海道が管理する踏切は、北海道内に1371か所。
このうち、レール探傷車の検査結果から、再検査の対象はおよそ220か所あるとしています。検査データを確認し、場合によっては、敷板を外して検査する考えを示しました。
JR北海道 綿貫泰之社長
「同じような海側で車体が重い貨物が走っていたり、そういったところの踏切については、実際にもう一度、探傷器で再検査をする」
日本大学(鉄道工学) 綱島均特任教授
「これをもって全部JR北海道の保守管理体制が、だめとは思わないが、やはり抜けがあった。できるだけ人手をコストをかけないで検査する方法はないかというところで、(他社も含め)知恵を出し合わないと、いけないんじゃないかなと思いますね」