医療機関で使う「健康保険証」の新規発行が停止され、「マイナ保険証」への移行が始まりました。しかし、メリットを生かせない場面も…現場から戸惑いの声です。
・カードリーダー音声
「カードを検出しました」
・マイナ保険証で受付した人
「子どもは初めてきょう使いました。私が前回初めて使って、こっち(マイナ保険証)のほうが簡単だった。スムーズだったので」
2日から本格的に移行した「マイナ保険証」。使っている人の一方で…
・従来の保険証で受付した人
「病院に「それ(マイナ保険証)じゃなきゃダメだ」と言われたらそうしますが、従来の保険証を使っていいなら使う」
3日午前中に受診した50人うち『マイナ保険証』を利用したのは7人。先月までの利用者は、1割ほどだったということなので、本格移行を受けて少し増えたようです。
4日は、よく分からない?やっぱり便利?『マイナ保険証』を『もうひとホリ』します。
・カードリーダー音声
「カードを検出しました。本人確認の方法を選んでください」
『マイナ保険証』の使い方です。受付にある「カードリーダー」に「マイナ保険証」を置いて「顔認証」か「暗証番号」から本人確認の方法を選びます。
「マイナ保険証」の特徴は、過去に処方された薬や検診などの情報を初めての病院でも共有できる、というもの。情報を共有するかどうかは、その都度選ぶことができます。
従来の『保険証』による受付よりもスムーズなように見えますが…
・来院した人
「やり方が分からないので、教えてもらいながらやろうかな…」
カードリーダーを使った受付に不慣れな人も多く、スタッフが対応することもしばしば…
・受付スタッフ
「手前側に差し込み口があるので、そちらに(カードの)差し込みお願いします」
・八軒内科ファミリークリニック 林千絵さん
「保険証(番号)を手入力する、その部分がちょっと削減された。(助成金などの)受給者証は(マイナ保険証には)ひも付かないので、その分、別で入力するのは、いままで通りであまり(手間は)変わらない」
札幌市の場合『子どもの医療費助成』の情報などは「マイナ保険証」で共有できず、これまでの受給者証で確認しなければいけません。
また、カードリーダーは現在1台しかないため、受付に列ができると、感染対策の面でも心配があるといいます。さらに…
・八軒内科ファミリークリニック 大坪優介院長
「薬の情報を見ることは、まだうちではできていない」
現在、クリニックで使っている電子カルテのシステムは、マイナ保険証のシステムと全く異なるため、連携ができません。そのため、いまはまだ、医師の手元のパソコンで、マイナ保険証の特徴である過去の薬の履歴を、確認することができないということです。
連携するには電子カルテのシステムがアップデートされるのを待たなければなりません。
・八軒内科ファミリークリニック 大坪優介院長
「便利な世の中のためのDX(デジタルトランスフォーメーション)は、僕はあるべきだと思っている。その一環で「マイナ保険証」もいいことかなと思いつつも、まだうちの進めているDXの中では「マイナ保険証」の有効活用はしきれていない」
厚生労働省のデータによりますと、先月「マイナ保険証」を実際に利用した人は1600万人余り。人口全体でみると7.5人に1人の割合です。
改めて、今後は「紙の」健康保険証が発行されなくなり、病院の受診の仕方は以下のようになります。
○マイナンバーカードを持っていて、保険証の登録もしている人は「マイナ保険証」で受診可能。
○マイナンバーカードがない、または保険証の登録をしていない人は、最長1年は、従来の健康保険証で受診が可能。
○その有効期限が切れたあとは、送られてくる「資格確認書」で受診可能。
ちなみに、健康保険組合などから「資格情報のお知らせ」が届いている人もいると思いますが、これは、あくまで健康保険の加入状況の確認の書類なので、受診には「マイナ保険証」が必要です。
『マイナ保険証』の課題を、プライバシー保護に詳しい東京経済大学の上机美穂教授に聞きました。
・東京経済大(民事法学) 上机美穂教授
「「マイナ保険証」も病院が持っているシステムの利用状況も、きちんと徹底して整備が進められていない、見切り発車で始めて「トラブルが起こったら何とかしましょう」という動きがある。ミスのない状態を全国の病院ができる状態にしてから進める方法もあったのではないか」
上机教授は、国民の理解が足りず、医療機関の体制が整わない中で制度が先行しているとして、国の進め方にも問題があると指摘します。さらに。
・東京経済大(民事法学) 上机美穂教授
「マイナンバーカードは今の段階では、任意であって義務づけはされていない。だが「マイナ保険証」が、義務化のような形に見えてしまう。マイナ保険証も任意のものだということを、はっきりとさせたうえで、マイナ保険証を持たない人をどうするかという考えが必要」