サシの入った、新鮮なクジラ肉。12月11日に北海道の石狩で水揚げされたばかりの「ナガスクジラの生肉」です。
木下純一郎記者
「西区のスーパーに来ました。先ほど午後1時過ぎからナガスクジラの刺身が並び始めてます。100グラムなんと754円です」
12日の午後、札幌市西区にあるスーパー。
「ナガスクジラの生肉」が店頭に並ぶのは、5年前に商業捕鯨が再開してから、初めてです。
店員:「(試食です)食べて!」
60代女性客:「(前食べたの)50年くらい前の話だよ!(試食)あらーちょっと」
70代男性客:「あーうまい!」
60代女性客:「おいしいですね!」
70代男性:「ミンクもおいしいけどナガスは格別だわ」
ただ、クジラ肉の消費量は多かった時の1%未満に減少。
クジラの食文化を残していけるのか、もうひとホリします。
堀内大輝アナ
「今年から操業が始まった日本生まれの捕鯨母船『関鯨丸』が、いま初めて北海道に入港しました。」
11日入港した「関鯨丸(かんげいまる)」は、クジラの解体から冷凍保存まで船内で行うことができる最新鋭の捕鯨母船です。
6日に根室沖でナガスクジラが捕獲できたため、冷凍ではなく特別に生肉で水揚げしようと、やってきました。
貴重なナガスクジラの生肉、その味は…
堀内大輝アナ
「こちらは希少な部位だという「尾肉」、尾びれのお肉です。これはおいしいですね。かまなくても、とけちゃうくらいのやわらかさがあります」
この尾びれの肉、いわゆる「尾の身」。
12日朝の札幌の中央卸売市場では、最高値が800グラム、8万88円で落札されました。
捕鯨を行う共同船舶 所英樹社長
「札幌を中心とした北海道の皆さまにもクジラのおいしさを十分に知ってもらって、ぜひ、クジラの需要を喚起していただければ」
日本では伝統的に行われてきた「クジラ漁」。
道内では、戦後の食料難を支える貴重なタンパク源で、学校給食では定番のおかずでもありました。
ただ、国内のクジラの消費量は、1962年の23万3,000トンをピークに減少。
国際的な捕鯨禁止の動きなどを背景に、1988年、日本は商業捕鯨を停止しました。
5年前に商業捕鯨を再開した後も低調なままで、2022年の消費量は、わずか2,000トンでした。
クジラ肉の消費が低迷する中、函館にあるこちらの古民家カフェでは、道南でいまも正月に食べる風習がある「くじら汁(じる)」を味わうことができます。
藤田忠士記者
「あー、鯨の脂身と旨みが汁に染み出てて、おいしいですね。あったまるわー」
くじら汁には、クジラの皮付きの脂身を塩漬けした「塩くじら」が使われ、根菜と山菜も、たっぷり入っています。
神奈川からの観光客
「(クジラの)この食感がすごい個人的に好き」
地域に根付いたクジラ料理。店長の赤塚さんは、大切な食文化を守っていきたいと話します。
函館さくら家 赤塚泉店長
「ほかにおいしいものもいっぱい出てきたし、作る手間とかがあるので。だんだん作らなくなる家庭も多くなったように感じる。もともとここが観光客がたくさん来る通りに店があるので、『こんなのあるんだ!』みたいなご当地食になって、もっと広まればいいなと思っている」
2022年で消費量は年間2,000トン、国民1人当たり年間17グラムということで、刺身一切れ分ほどしか口にしていないクジラ肉。
この食文化をどうやって守っていくのか。道内ではこのような取り組みも行われています。
網走:小中学校で「くじら給食」
クジラの食文化を知ってもらうために行っており、2024年のメニューは「くじらの竜田揚げ」です。
釧路:「くじら祭り」を開催
2024年は、37の飲食店がクジラ料理を提供し、消費拡大を呼びかけました。
このように捕鯨を進めていくと、クジラの数が減っていくのではないかと心配されるところですが、このような対策をしています。
水産庁では捕鯨できる数を、推定資源量の約0.4%である、年間439頭と決めています。
貴重な資源と食文化を残していけることを願います。