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「怖くて一緒に居られない」札幌すすきのガールズバー爆発火災 無差別的な犯行の背後にDV被害 凶行に及んだ41歳男性の歪んだ支配欲

北海道放送 2024年12月28日 16時26分

◇《突然、立ち上った大量の煙…這うように逃げる女性の姿》
11月、札幌すすきののバーで起きた爆発火災です。

どれだけ被害が広がるかわからないような、無差別的ともいえる犯行。背景にあったのは、元交際相手に対するDVでした。

ススキノに立ち昇る大量の煙。路上には、女性が這うようにしてビルから離れようとしています。

・堀内大輝アナ
「消防隊が、近くの消火栓からホースを伸ばして煙が出ているビルに向かっています」

「駅前通り、すすきの交差点から少し南に入ったところです。消防車がたくさんいて道を埋めています」

11月、札幌市中央区南5条西3丁目の6階建てビル、2階のバニーガール姿の女性が接客するガールズバーで、爆発が起きました。

・堀内大輝アナ
「けがをしたとみられる人が、いまビルの中から出てきまして、運ばれていきます」
「服が少し焦げていたように見えました」

◇《火をつけた疑いの男性(41)は約3週間後に死亡》
この爆発で、店内にいた男性客2人と、20代の女性従業員が全身にやけどを負いました。

警察は火をつけたとみられ、意識不明の状態で病院に運ばれた、41歳の男性の回復を待ち話を聴く方針でした。

しかし、事件から約3週間後、それは叶わぬ事態となります。

・三栗谷皓我記者
「男性は重度の火傷を負い、病院で両足を切断するなどの治療を受けていましたが、敗血症が悪化し、容体回復の見込みはたたなかったということです」

死亡したのは、札幌市東区の建設業・久保裕之社長41歳です。

◇《なみなみと液体が入ったバケツを手にした男》
HBCは店の入口に設置された防犯カメラの映像を独自に入手。

犯行の一部始終を捉えた映像から、画像を切り出しました。

ビルの2階にある店舗の入り口の前に、久保社長とみられる男が立っています。

キャップを被りマスク姿。作業着のような服装で、手にしたバケツには液体が入っています。

店の前の床にバケツを置き、ビンのようなものを手にして、何かを玄関マットに撒くような仕草を見せます。

そして、再度バケツを持って店に入っていきました。

この画像は、店内のカメラが捉えた、店に入った男の姿です。

バケツの中には、薄く色がついたガソリンのような液体が、なみなみと入っています。

男は、無言で店の奥へと進んでいきます。

そこで、床にバケツの中の液体を躊躇なく撒くと、男は、ライターのようなものを取り出しました。

◇《男の不審な動きに気づき逃げた、そのとき…》
店内のカメラの映像に基づいて作成した、当時の状況です。

男の不審な動きに気づいた女性従業員たちが、カウンターを飛び越え逃げだした瞬間、男は火を放ちました。

爆発直後の店の入り口の前。逃げ道を奪うためだったのか、ビンの液体が撒かれたとみられる玄関マットから、激しく炎が上げっています。

男が現れてから、爆発までわずか1分間ほどの犯行でした。

◇《SNSに投稿された犯行予告とも取れるコメント》
・堀内大輝アナ
「店舗の近くで男性の車が発見されました。車の中からは携行缶が見つかっていて、警察は、男性が液体を携行缶からバケツに移し替えて、ガールズバーに運んで犯行に及んだとみています」

久保社長のものとみられるSNSには、犯行予告ともとれるコメントが投稿されていました。『楽しいことするよ』…。

事件の1週間後、久保社長の父親がHBCの取材に応じました。

・久保裕之社長の父親
「ススキノで火事があって、その容疑者っていうか、名前を(警察から)聞いてびっくりしたんだけども…」

「性格は、どっちかっていうと気の小さい部分が、大きいと思うんだけども、どうしてこんなことになったんだということをを聞きたい」

◇《「別れ話で揉めた…」女性従業員が警察に相談》
事件の背景には、久保社長とけがをした女性従業員との間に、交際を巡るトラブルがあったと警察はみています。

女性従業員は、久保社長と同棲していましたが、先月7日「別れ話で揉めた。彼氏が暴れた」と警察に相談。

上司にも相談していました。

・ガールズバー代表の男性
「暴れているとか、発狂してくるとか。怖くて一緒にいれない、もう別れたいと…」

◇《“交際解消”後も、執拗に接触を迫る》
翌日、警察立ち合いの元で、女性は引っ越し。

警察が、久保社長に女性と無理に会うのを控えるように伝えると、久保社長は『反省しています』と答えたといいます。

しかし、その後も、女性の引っ越し先に現れたということです。

さらに、久保社長から送り付けられたLINEのメッセージには『会いたい会いたい会いたい…』と、同じ言葉が何度も重ねられていました。

・ガールズバー代表の男性
「ちょうど事件の1週間ぐらい前に、男性の話をしたばかりだったので、もしかしたら彼かと思った。その爆発の瞬間に」

◇《背景にある“DV”という問題》
事件は、なぜ起こってしまったのか?

DVの被害者を支援する『女のスペース・おん』の代表理事、山崎菊乃さんです。

・『女のスペース・おん』代表理事・山崎菊乃さん
「別れた後が1番危険なんですよね。今回もそうだったんですけど、別れ際だとか、別れた後っていうのが1番危ない」

夫からDV被害を受けていた女性は、支配的な関係に置かれていた当時について、こう振り返ります。

・DV被害を受けていた女性
「ひょっとしたら夫が反省して、謝ってくれて、変わってくれて、また前のように、仲良くやっていける日が来るんじゃないかって」

夫とは再婚同士、日常的に酷い扱いを受けていたと、女性は話します。

・DV被害を受けていた女性
「ヘアドライヤーを買おうとすると、安いものしか選んではダメだとか言われたし、(夫から)『ペットのドライヤーがあるからそれを使えばいい』と言われて…。身体的な暴力もありましたし」

◇《支配的な関係に置かれた被害者の心境》
女性は市役所に相談し、夫から受けている行為は“DVだ”と告げられていたいいます。

しかし、女性は当時の心境をこう話します。

・DV被害を受けていた女性
「私があのとき、夫に文句を言わなければ、人格否定はされなかったから“文句を言ってしまった私が悪い”と思った。まさか、この人(夫)がDVなわけないと思った」

その後、弁護士に相談しても「変わってくれるかも…」と、淡い期待を夫に抱いていた女性。

いまでも覚えている、別れるきっかけになった、警察からのある言葉があります。

・DV被害を受けていた女性
「(警察から)“この人と一緒に居なくてもいいんじゃないの?”」

女性は、今年初めに離婚。当時の自身の心境を、改めて振り返ってもらいました。

・DV被害を受けていた女性
「恋愛感情で相手の欠点が見えなくなってしまっていました…依存です」

◇《DV被害から救い出すために…》
『女のスペース・おん』代表理事の山崎さんは、警察への相談だけではなく、支援団体への相談も重要だと言います。

被害者が、緊急的に避難して生活することができる施設での一時保護も可能です。

住所非公開で、加害者に知られることなく、次の生活への準備を進めることが出来ます。

・『女のスペース・おん』代表理事 山崎菊乃さん
「弁護士をつけるってことや、お金がまったくない人に関しては生活保護をつけるとか。子どもがいる場合には住民票を移さないで、転校の手続きをするとか」

誰かに話したいと思ったとき、話を聞いてほしいと思ったときに、相談してほしいと山崎さんは話します。

・『女のスペース・おん』代表理事 山崎菊乃さん
「みんな勇気出してくるんですよ。もう相談に来るだけで、すごい勇気ですよ」

「辛いなって思ったら、とにかく相談、まず誰かに話を聞いてもらえれば、どこかにつながるので“独りぼっちはないです”ってことを、皆さんにお伝えしたいなと思います」

◇《容疑者とみられる人物の死亡で、全容解明は困難に》
DV被害から発展したとみられる、多くの人を巻き込んだ今回の事件。

なぜ、火をつけたのか?誰も止めることはできなかったのか?

すべてを知っていたとみられる久保社長は死亡したことで、全容解明は困難になりました。

警察は、容疑が固まり次第、久保社長を現住建造物等放火などの疑いで、書類送検する方針です。

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