埼玉県で道路が陥没し、トラックが転落した事故。
30日未明に起きた新たな崩落で、穴がさらに大きくなり、住民に不安が広がっています
埼玉県は道路が陥没した原因について「下水道管が腐食して穴があき、土砂が流入した可能性がある」としています
札幌市の下水道は、1972年の札幌オリンピックの開催を契機に、集中的に整備されました。
コンクリート製の下水道管の寿命は50年とされているため、当時に作られた下水道管の老朽化は深刻な状態です。
破損すれば、道路の陥没も招きかねない下水道をどう守っているのでしょうか。
見学会ができるほど太い下水道なら、作業員が中に入って点検や修理ができますが、人が入れない太さの下水道はどう管理しているのか?札幌市の西部下水管理センターを訪ねました。
高橋伸幸 記者
「ラジコンカーのような機械がありますが、これはどういった装置?」
札幌市下水道河川局 吉田修 管路保全課長
「下水道本管の中を自走して、カメラで撮る機械になります。人が入れないところはこういったカメラで調査することになる。小さな破損が経過して、ひび割れが広がり、陥没につながる恐れがある。そのため定期的な調査が必要」
この機械は遠隔操作で下水道管の中を進みます。
テレビカメラを上下左右に動かして、内部の鮮明な映像を、地上にあるモニターに映し出します。
実際の調査で撮影された映像には、下水道管に大きなひび割れがあるのを発見しました。
右側に枝分かれしていく部分が破損しているのも確認できますが、破損があっても、すぐに管を入れ替えるわけにはいきません。
札幌市下水道河川局 吉田修 管路保全課長
「やはり道路から掘って管を入れ替えるのは市民生活への影響が大きくなる。上から掘るのではなく、こちらの材料を…」
10年ほど前から増えているのが、樹脂でできたチューブを破損した下水道管の中に送り込み、空気圧などで膨らませて、内側から貼り付ける工法です。
先ほどの大きくひび割れた箇所も、樹脂を貼り付けると、見違えるように滑らかになりました。
枝分かれする部分も、コンクリートの内側に樹脂がぴったりと貼り付いているのがよくわかります。
この工法により、耐用年数に達した古い下水道管でも、交換することなく、使い続けることができます。
札幌市北区にある下水道科学館。
普段、市民が直接目にすることが少ない下水道について学べる施設です。下水道で実際に行われている作業についてもパネルなどで紹介されています。
中でも人気なのは、ゲーム感覚で下水道管の中をめぐり、点検や修理を体験できるコーナーです
高橋伸幸 記者
「上にひびだ!これを治す」
市民に下水道への理解を深めてほしいという思いが展示に込められています。
365日、生活に欠かせない下水道を守り、万一の事故を防ぐ取り組みが車や人が行きかう地面の下で続けられています。
▽スタジオ解説
下水道管の点検は、マンホールを開けて道路を占有して行うため、積雪期には実施していませんが、札幌市では年間約210キロの下水道管を点検しているということです。
埼玉の道路陥没は下水道管の腐食が原因とされていますが、これはどこで起きてもおかしくありません。
下水道管の標準耐用年数は、約50年とされていて、札幌市の場合はどうなのでしょうか。
札幌市の下水道管の総延長は、約8300キロ。これは札幌市からアメリカ・ロサンゼルスまでの距離に匹敵します。
このうち標準耐用年数の50年を経過した下水道管は、2022年度末の時点で17%にあたる1411キロ。
2032年度末には、60%の4983キロまで急増するとみられています。
今回の埼玉の事故を受けて、埼玉県内12の市や町の約120万人を対象に、汚水が溢れる可能性があるとして、風呂や洗濯などの排水を控えるよう要請しています。
また、今回の事故を受けて国土交通省は29日、全国の下水道管理者に同様な箇所を緊急点検するよう要請しましたが、札幌市には、該当する同様な箇所がないため緊急点検は行わないということです。
社会インフラの問題は今後さらに深刻化していきます。どのように安全を担保するのか、避けて通れない課題です。