一歩間違えば命にかかわる雪降ろし中の人身事故。大雪に見舞われた北海道内でも後を絶ちませんが、背景には北海道ならではの事情があるようです。
11日午後1時すぎ、岩見沢市北6条西18丁目の住宅で、83歳の男性が車庫の雪下ろしをしていたところ、足を滑らせて2メートルほど下に転落しました。
男性は肋骨や腰の骨などを折りましたが、命に別状はないということです。
北海道によりますと、去年11月から先月末までの雪による事故の死傷者は152人に上っていて、このうち8人が死亡、45人が重傷となっています。
死傷者の中でも多いのが雪下ろしに関連する屋根やはしごからの転落で、およそ6割を占めています。
北海道科学大学の千葉隆弘教授は、雪下ろし中の事故が相次いでいる背景について、高齢化に加えて北海道の住宅事情が関係していると指摘します。
北海道科学大 工学部 建築学科 千葉隆弘教授
「北海道の住宅は(大半が)雪下ろしを前提にしていない」
道内の6割から8割の住宅は、1980年代以降に設計された、雪を自然にとかす「無落雪屋根」が主流で、そもそも雪下ろしをする必要がないといいます。
北海道科学大 工学部 建築学科 千葉隆弘教授
「全く(雪を)下ろす必要がない。(無落雪屋根は)命綱をどこかにつけるといった機器も全くない。そういう危険な状態で雪下ろしが行われているのが実態」
こちらは北海道と同じく多くの雪が降る秋田県横手市の住宅です。2階の窓から1階の屋根の上に出やすくなっているほか、雪下ろしを想定した、はしごも設置されています。
北海道内の無落雪屋根の住宅は、命綱をつなぐ金具がないことも多く、はしごも屋根の清掃が目的で、登りにくい場所に設置されています。
千葉教授は、住人が自らはしごを設置したり命綱を誤って使ったりすることが事故につながるとみていて、無落雪屋根の場合は無理に雪下ろしをしないよう呼び掛けています。