◇《“春先の海みたい…”いまだ流氷の姿なし》
真冬の凍てつく海を見渡しても、流氷は、沖にまばらに見えるだけ…いま、北海道のオホーツクの海に“異変”が起きています。
今月11日の、流氷観光船『ガリンコ号Ⅱ』。本来、氷を割りながら進むはずが…そこは青海原。
流氷観測船『ガリンコ号Ⅱ』スタッフ
「春先の氷みたい。氷の規模は毎年小さくなっていっている」
いま、オホーツク海に、いったい何が起きているというのでしょうか。
今村朋慎カメラマン
「網走市北浜の海岸です。2月中旬には流氷が押し寄せていますが、今年は水平線にすら流氷が見えません」
◇《過去最遅の“流氷初日”になる網走》
北海道網走市では、平年で1月下旬に、沖合の流氷が沿岸から観測できる“流氷初日”を迎えます。
しかし、今シーズンはまだ見えていない状況です。網走の“流氷初日”の最も遅い記録は、これまで1993年2月10日でした。
オホーツク海沿岸のJR北浜駅で、観光客の反応を尋ねてみると…。
兵庫県からの観光客
「流氷を見れなかったのは残念だけれど、オホーツクの海はきれいだったし、それなりに楽しかったです」
「また来れたらいいな」
◇《流氷が見たい…という強い願望で、大人気の施設》
一方、網走市内にある人気の観光スポット『オホーツク流氷館』では、マイナス15度の部屋で、本物の流氷を間近で見ることができます。
その部屋で、タオルを力一杯回してみると…あっという間にカチカチに凍りつきます。
兵庫県からの観光客
「去年は、イイ流氷を見て、今年も…と思って楽しみに来たんですけれど、残念でした」
札幌からの観光客
「地球温暖化心配ですね…」
2月に入ってから、すでに1万3000人ほどが訪れています。去年の同じ時期に比べ、1.5倍の入場者数です。
オホーツク流氷館 四ツ倉大介統括部長
「流氷が見たいという強い願望の表れかと…。国内外からお越しいただいているので、ぜひ(本物の流氷を)見ていただきたいと切に願っている」
◇《地元の観光への影響も…なぜ流氷が来ないのか?》
オホーツクの主要な観光資源の一つ、流氷がやってこない…。地元の観光への影響も心配されます。
網走市観光協会 二宮直輝 専務理事
「2月を中心とした“流氷観光シーズン”は、多くの客が流氷目当てに来るので、そうした機会が少なくなることで、少なからず(観光への)影響出るかもしれません」
「いずれにしても、いち早く流氷に来ていただきたい」
今シーズンの流氷はなぜ遅いのか。HBCウェザーセンターの近藤肇気象予報士によると『風向き』と『オホーツク海の水温』が関係していると分析します。
HBCウェザーセンター 近藤肇 気象予報士
「流氷が遅い原因を2つあげるとしたら“北風の日が少なかった”で、(流氷の)南下が遅い…」
「そして、海水温が高い…この2つが大きな原因と思います」
北風が少なく、流氷の動きが遅かったこと。
また、海水温が高く、流氷が移動しながら、溶けてしまうだけでなく、いつもなら凍ってしまう北海道沖の海も、今シーズンは凍らなかったというのです。
背景には、温暖化の影響があるのでは…と、近藤予報士は懸念します。
HBCウェザーセンター 近藤肇 気象予報士
「オホーツクの流氷に限っていいますと、近い将来やって来なくなる。あるいは、流氷自体がなくなってしまうという事態も、遠からずやって来ることになってしまう」
◇《網走沖などでは、いまも海面水温が高いまま》
堀内大輝アナ)
北海道網走市では流氷が見えていない状況にありますが、同じオホーツク海沿岸の紋別では2月1日に“流氷初日”を観測してから、しばらく流氷の姿を見ることができませんでした。
それが、12日に、量は多いとはいえないまでも、船が流用の中を進むような状況があったとの報告も届いています。
気象予報士の近藤肇さんの解説にもありましたが、今月11日のオホーツク海の海面水温です。
平年と比べて高ければ赤色、低ければ青色ですが、青い部分はありません。
網走沖などのオホーツク海の海面水温は、3度ほど高いことが分かります。
オホーツク海の流氷は、北からやってくる氷と、北海道沖の氷が混じったものですが、海水度が高ければ、やってくる氷は溶けてしまい、また北海道沖で、海が凍ることもないというわけです。
堀啓知キャスター)
海の温度が上昇する背景には、温暖化の影響も無視できない状況にあると考えた方がよさそうですね。
流氷が来ない、海が凍らない…そんな事態になると、北海道では、流氷の上を歩いたり、凍った海を走ったりなどの、冬のアクティビティの存続も、危うくなってくる可能性もあるわけですね。
◇《流氷が覆わない冬の海には巨大生物の群れが…》
堀内大輝アナ)
こうした中、北海道知床エリアでは、いま、流氷の代わりといってはなんですが、ある『生き物』が間近で見られると、話題を集めています。
悠々と空を舞うのは、オジロワシの群れです。
北海道東部の羅臼町、『知床観光クルーズ』が撮影した映像です。
知床ネイチャークルーズ 長谷川喜勇さん
「流氷は、例年以上に遅れているが、オジロワシやオオワシに関しては、例年通り、たくさん見えています」
この時期は、“流氷”の上で羽を休めるオジロワシやオオワシが見られると、人気のスポットです。
そして今シーズンは、ダイナミックな“シャチ”の姿も見ることができるんです。
知床ネイチャークルーズ 長谷川喜勇さん
「流氷の代わりにシャチが、羅臼の沖に観光船が到達できるところに、今シーズンの冬は見えている。そういった部分でも、客に楽しんでいただいている状況です」
堀内大輝アナ)
羅臼町沖のオホーツク海にも、まだ流氷がやってきていないという状況なので、その分、シャチの群れが沿岸に近いところまでやって来ることができる…というわけです。
堀啓知キャスター)
こうした生き物たち、海の生態系を残していくためにも、流氷の存在が欠かせないわけで、流氷が遅いということが、どういうことを意味するのかについて、今一度、考えなければいけないと再認識しました。