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元嘉風・中村部屋の“脱・伝統稽古” 1日3食、ぶつかり稽古なし、酸素カプセル 友風「理にかなっている」

スポーツ報知 2024年6月19日 5時0分

 大相撲の二所ノ関部屋から独立し、移転先の東京・墨田区で始動した中村部屋が18日、最新設備を導入したトレーニングルームを公開した。稽古の2部制、1日3食など従来の指導方針にとらわれない“脱・伝統稽古”を鋭意実践。異例の取り組みを通じて「関取30人誕生」を目標に掲げた中村親方(42)=元関脇・嘉風=が目指す新時代の相撲部屋を担当の大西健太記者が「見た」。

 朝起きたら猛稽古、終わればちゃんこの常識は中村部屋にはない。午前7時頃から朝稽古を始め、終わった後に食事、昼寝を経て夕食、就寝が相撲部屋のルーチンだが、中村部屋の一日は朝食から始まる。中村親方は「朝食を抜くことは考えていません。体に栄養のある状態で、体を動かすのがいいと考えています」と説明。主な部屋では昼夜の1日2食で終わってしまうところを、朝食をとることで、健康的とされる1日3食を目指す。

 立ち合いも基本的に行わない。四つに組んだ状態から相撲を取る独特の稽古を採用しており「体の使い方を覚える。相撲の攻防というものを教えたい」という明確な意図があり、幕内・友風(29)も「しっかり考えて巻き替えの練習ができた」とぶつかり稽古のない成果を語る。師匠の考えは部屋の力士に浸透している。稽古中は終始笑顔で、ぴりついた稽古場とはかけ離れた雰囲気。「俺が笑っているんですもん」と、師匠と弟子の距離の近さがうかがえた。

 稽古は2部制だ。この日は午前9時30分から始動し、午後2時から再開した第2部では筋力トレーニングを行った。休みは週2日で、相撲を取る稽古も週3回までと制限。代わりに筋力トレーニングを週2日導入。このため部屋の3階を器具を入れたトレーニングルームに。疲労回復に相撲部屋では珍しい酸素カプセル(約300万円)も導入。親方が現役時代から愛用していた筋トレ器具に加え、100万円以上をかけて整えた。「あくまで力士ファーストではないけど、力士の意見を取り入れたい」と弟子の言葉にも耳を傾ける。19日の稽古も疲労具合を確認した上で休みの判断をした。

 現在の所属力士は8人。うち関取は友風と新十両の嘉陽(24)だが“脱・伝統稽古”で「将来的には関取30人を育てたい」と掲げる。「自分は師匠1年生。試行錯誤を繰り返していく」と中村親方。角界に新風を吹き込む試みになりそうだ。(大西 健太)

 ◆友風、1日3食に賛同「理にかなっている」

 「親方を信じてやっていく」と友風をはじめ、弟子も中村親方のメソッドに賛同だ。

 食後2時間は稽古をしない方針があり、この日の友風の朝食は稽古の2時間30分前。白米と卵料理を食べた。1日2食の以前と比べ「しっかり動けていると思います」と、1日3食の手応えを口にした。好影響も感じており、「グリコーゲン(筋肉を動かすためのエネルギーとなる糖)はお昼の11時から20時までが最もたまるピークで、午後のトレーニングは筋肉がつきやすく、理にかなっていると思います」。日体大時代の稽古の時間は朝10時や午後4時が多かったこともあり、「違和感はない」。試行錯誤の段階でもあり、「効率が悪いなと思ったら、親方自身で省いていくと思う」と師匠に身をゆだねた。

 ◆中村部屋 元関脇・嘉風の中村親方が、二所ノ関部屋から1日付で独立。東京・墨田区の部屋は旧陸奥部屋の建物で、両国国技館まで最短部屋の徒歩2分。幕内・友風や名古屋場所の新十両・嘉陽らが所属。力士は計8人。

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