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「踏ん張って、踏ん張って、踏ん張った」28歳日本記録保持者が屈辱胸にV&パリ切符 女子100M障害

スポーツ報知 2024年7月1日 6時0分

◆陸上 ▽日本選手権 最終日(30日、新潟・デンカビッグスワンスタジアム)

 女子100メートル障害決勝で、日本記録保持者の福部真子(28)=日本建設工業=が12秒86(向かい風0・2メートル)で2年ぶり2度目の優勝を飾った。前日(29日)の準決勝でパリ五輪の参加標準記録(12秒77)を突破しており、初の代表入りが確定。4位で世界選手権出場を逃した昨年大会の雪辱も果たした。

 雨が降りしきる新潟の舞台で主役になった。6台目から抜け出した福部は、12秒86でライバルに競り勝って2年ぶり2度目の優勝。パリ行きを決めた。「頑張って良かった。リベンジ達成っていう気持ちでいっぱいです」。今大会は笑顔がテーマ。こだわりのメイクという眉毛とアイラインのシルバーラメは、満面の笑みに似合っていた。

 苦しい1年を過ごしてきた。近年の女子100メートル障害は12秒台連発と大混戦。前回世界選手権(ブダペスト)代表を懸けた23年日本選手権は、福部にとって悲劇だった。参加標準記録をただ一人突破していたが4位に終わった。場内の速報では一時1位と大型ビジョンに示されて喜んだが、まさかの誤表示だった。上位3選手が世界ランクで内定したため、あと一歩で落選。「あの瞬間を、忘れたことはない」。いつしか苦い思いは原動力となっていた。

 努力を重ねた。「踏ん張って、踏ん張って、踏ん張った」。スピードと跳躍力を意識した走りを目指し、この1年は肉体改造に着手。「お肉は食べずに魚だけ。脂質をとにかくカットして、1日2食とかで徹底的に減量した」。体脂肪は10%から7%になった。「筋肉のパワーも高まった上でさらに絞れている」。日本記録を出した22年も8%台で、“パリ仕様”の体は極限まで仕上がっていた。29日の準決勝で参加標準を突破した12秒75の好タイムも必然だった。

 それでも決勝前夜は重圧に襲われたという。「夜は全然眠れなかった。(昨年の)トラウマがまだあった」。スタート前、頭に浮かんだのは支えてくれた仲間たち。「去年たくさん悔し涙を一緒に流してくださった人たちと喜びを分かち合いたい。その気持ちだけで踏ん張れた」。感謝を胸に迎えた大一番だった。

 初の五輪代表に内定した。「競技をしている中で絶対に、一番出たい試合。夢の舞台」。その切符を最高の形で手に入れた。「自分と向き合うことをやめずに走るのを続けられたことが、今につながっている。今はもう、失敗とは思いません」。大きな壁を乗り越えた。花の都で新たな一歩を踏み出す。(手島 莉子)

 ◆福部 真子(ふくべ・まこ)1995年10月28日、広島・安芸郡府中町生まれ。28歳。小学4年時に地元のジュニアチームから競技を始める。府中中3年時の全日本中学陸上選手権の四種競技で優勝。広島皆実に進学。全国高校総体で3連覇。日体大から日本建設工業に進み、22年7月世界選手権(オレゴン)では準決勝で12秒82の日本新記録をマークするも、決勝進出は逃した。同年9月に12秒73とさらに記録を更新した。165センチ。

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