◆ＪＥＲＡ セ・リーグ 巨人６―１中日（３日・前橋）
左翼席に向かって一直線に伸びていく白球に目をやり、ヘルナンデスが確信に満ちた表情を浮かべる。割れんばかりの大歓声が打球の行方を告げると、雄たけびを上げた。「しっかりとボールを見てスイングすることができました。先制点になって良かった」。両チーム無得点の３回２死一、三塁、１ボール１ストライクから涌井の内角高め１４６キロ直球に反応。両腕をたたみながらコンパクトに振り抜き、強烈なライナーをたたき込んだ。先制の今季５号３ランが来日初Ｖ打。悠然とダイヤモンドを一周し、顔をほころばせた。
とどまる気配がない。６月はセ・リーグトップの月間打率３割５分２厘と打ちまくった。７月に入っても２試合連続で快音を響かせるなど、変わることなく好調を維持。月をまたいで１４戦連続安打中だ。初対戦の投手との打席が少なくないなかで「試合前に映像やデータをしっかりと確認するようにしてます」と予習を徹底。３番を任される勤勉な男が前橋でもアーチを描き、勝利の道先案内人となった。阿部監督は「チームが楽になった３点だった。すごい貴重な一本だなと思います」と絶賛した。
異国で挑戦を続ける助っ人の心の支えがある。離れて暮らす１歳の娘アマイアちゃんの存在だ。「毎日通話しているよ。球場に来る前に電話で話しているんだ」とニッコリ。画面越しで言葉をかけるかけがえのない時間が、底知れない大きなパワーを与えてくれている。
チームメートの存在も心強い。練習の合間には、明るい性格を生かして日本人選手とも積極的に交流する。和やかに談笑している場面が多い大城卓は「話している中身はたいしたことないですよ」と笑いつつ「ハイタッチとかしながら仲良くやってます」と明かす。チームに打ち解けているからこそ、持っている力を存分に発揮できる。
チームは助っ人の一発に導かれて勝利。上位進出へこの男の活躍は欠かせない。「チームメートと毎日一生懸命練習してますし、コーチ陣やスコアラーさんがアドバイスをくれるので好調に結びついている」。勢いに乗る背番号４２が、覇権奪還を狙うチームの中核を担い続ける。（宮内 孝太）
【堀内恒夫Ｐｏｉｎｔ】 涌井はテクニックを使おうとして、調子に乗りすぎたな。初回のように、スライダーを投げておけば、ヘルナンデスは三振してたかもしれんよ。１球内角を見せるのは分かるけど、それがストライクゾーンに来てしまったらな…。制球ミス。しかし、それを見逃さなかったのだから見事だよ。８回のダメ押しのきっかけになった祖父江のスライダーを打った中前安打もさらに素晴らしい。一発は失投だけど、これは失投ではない。安打狙いにいって安打が打てる。最近では珍しく優秀な打者だよ。