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古川琴音、恋愛映画のヒロイン初挑戦 新境地を経て目指す理想像

スポーツ報知 2024年7月4日 7時0分

 女優の古川琴音(27)が、公開中の「言えない秘密」(河合勇人監督)で、恋愛映画のヒロインに初挑戦している。主演を務めるSixTONES・京本大我(29)の相手役で、“とある秘密”を抱える謎めいたヒロインを演じる。音大が舞台であることから、ピアノの猛練習にも励んだ意欲作。新境地を経て「無味無臭だけど存在感のある役者でいたい」と理想像を語った。(奥津 友希乃)

 気さくながら、どこかつかみどころのない魅力をさらりとまとう。愛らしい声色で紡ぎ出す言葉や表現に、唯一無二の引力がある。

 初挑戦となる恋愛映画のヒロインに古川は「正直、プレッシャーが大きかったです。お客さんがどういうものが欲しいか、ある程度想像もつくからこそ不安で。『需要にちゃんと応えられるものじゃなきゃいけない』と思ったのは今回が初めてでした」と振り返る。

 同名の台湾映画(日本公開は08年、ジェイ・チョウ監督)が原案のファンタジー・ラブストーリー。「原案映画を見て、この物語を大好きになれた。ヒロインをやらせてもらえることが本当に光栄なことだなと思いました」と出演を決断した。

 演じるのは、主人公・湊人(京本)が音大の校舎で出会う女子学生・雪乃役。とある秘密を抱える役どころだ。シーンごとに自然体なかわいらしさ、神秘的で謎めいた存在感、はかなさを宿したノスタルジックな雰囲気と、まるで万華鏡のように一瞬一瞬、表情を変えていく。古川の表現力の奥行きが光っている。

 「つかみどころのない、浮き世離れしたような空気感もあるけど、雪乃の“秘密”が明らかになってからは、その葛藤やもがきに胸を打たれる部分も大きいと思うんです。その人間くさい苦しみも大事にしました」

 音大を舞台にピュアな恋愛模様が描かれる。京本の頬を指でツンと触る胸キュンシーンなど、ストレートな感情表現もあり「(自分とは)ギャップありまくりです!」と照れくさそうに明かす。京本とは初共演で「ダンスもお上手だから、体に気持ちを乗せたり込めたりできる人なんだなと。言葉とかよりも、湊人の体の動きを見て感じ取ることたくさんありました」。

 大きな課題となったのが、物語の不可欠要素でもあるピアノ演奏。幼い頃に約6年間習っていたが、十数年のブランクを埋める必要があり「私の課題曲は3、4曲だったけど、(初心者の)京本君は7、8曲もあった。彼が一生懸命練習する姿からパワーをもらいました」と、撮影に入る1か月半前から毎日練習に励んだ。

 京本と古川による連弾シーン。ショパンの美しい旋律に乗せてふたりの指、音色、思いが交錯する。心の距離が縮まる重要シーンで、監督の要求は高いものだった。

 「監督からは『練習が大変なのは分かるけど、発表会にならないでください』と言われました。難しい曲で弾くのがやっとで、最初はそんな余裕もなかったんです。でも演奏はふたりをつなぐもので、お互いの音をちゃんと聴いて演奏できた方がかっこいいなと。京本君と必死にやり切りました」

 演じた雪乃は、ピアノに人生の多くの時間を注ぐ役柄。自身が情熱を傾けるのは「いま現在はお芝居だと思いますね」。一呼吸置き、はっとしたような表情を浮かべ「でも大きく捉えると、一番執着しているのって自分の人生かな」と、ちょっと意外な言葉が返ってきた。

 「今はお芝居の道にいるけど、もし何か新たに挑戦したいって思うことがあったら、その出会いや気持ちも大切にしたいんです。人生をどう生きるかって視点はぶらすことなく生きたい。常に自分の情熱の向く先にいたいです」

 女優デビューから6年。今年は、フジ系月9ドラマ「海のはじまり」など現時点で待機作含め出演作は10本に上るなど、映画やドラマに引っ張りだこだ。

 「6年もいるのに、まだこれだけできないことがあるって気持ちもあります。そう思っている限りは続けられる。お芝居からしか得られない栄養がありますし、今後どんな役に出会えるか、自分がちゃんと演じられるのか、すごく楽しみです」

 最も興味を持つのが料理人の役。「この前は撮影を頑張ったご褒美に、明石焼きとたこ焼きを計16個も食べちゃいました」と明かすほど、食べることが大好き。「今回のピアノのように、撮影に入る前からちゃんと包丁さばきや、おだしの取り方とかを本格的に習ってみたい」と声を弾ませる。

 理想の女優像は「素材としていられる人」という。

 「いつでも新鮮にお客さんに映っていたいですよね。自分そのものやプライベートが透けて見えるんじゃなくて、街角のスナップ写真の中にいる人のような『なんだか印象的』って残り方をしたい。うわあ~、言葉にするのが難しいですね」とふわりとした笑みを浮かべる。

 丁寧に考えを咀嚼(そしゃく)し「無味無臭、だけど映画に入るとちゃんと存在感のある役者になっていたいなと思います」と自らに言い聞かせるように、うなずいた。

 ◆「言えない秘密」 英国でのピアノ留学から帰国した音大生・湊人(京本)は、留学先でのトラウマによりピアノを遠ざけていた。ある日、湊人は取り壊しが迫る旧講義棟で美しいピアノの音色を奏でる雪乃(古川)と出会う。ひかれ合うふたりだったが突然、雪乃は湊人の前から姿を消してしまう。114分。

 ◆古川 琴音(ふるかわ・ことね)1996年10月25日、神奈川県生まれ。27歳。2018年に女優デビューし、同年製作の短編映画「春」で初主演。同作で数々の映画賞の主演女優賞受賞。21年、第71回ベルリン国際映画祭で銀熊賞に輝いたオムニバス映画「偶然と想像」(濱口竜介監督)の一編でも主演を務めた。主な出演作は、NHK連続テレビ小説「エール」、大河ドラマ「どうする家康」など。身長161センチ。特技はダンス。

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