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戸郷翔征「俺って人生の視聴者は俺だけだ」ルパン三世の名言を糧に通算50勝「僕がワクワクするような人生を」

スポーツ報知 2024年7月6日 5時0分

◆JERA セ・リーグ ヤクルト3―10巨人(5日・神宮)

 巨人が15安打で今季2度目の2ケタ10得点を挙げてヤクルトを下し、連勝で貯金を6月10日以来の「2」とし単独3位に浮上。首位・広島とは2差とした。先発の戸郷翔征投手(24)が7回途中3失点で今季7勝目をマークし、球団スピード9位で通算50勝(31敗)に到達した。打線は今季初となる初回先頭からの3連打で先制。岸田行倫捕手(27)の2点打など一挙4点を先行した。

 熱気に包まれる神宮球場。戸郷は村上のバットが空を切ると、顔色一つ変えず堂々とベンチへ戻った。4点の援護をもらって上がった初回。2死二塁とピンチを背負ったが、4番をフォークで空振り三振に斬ってうなずいた。

 6回1/3を7安打3失点でチーム単独トップの7勝目を挙げ、111試合目での通算50勝に到達。球団では桑田真澄を超え菅野に次ぐ9番目、高卒では69年堀内恒夫に次ぐ2番目のスピード達成に「僕だけの力じゃないですし、たくさんの方のおかげで50勝できた。これからも感謝しながら投げていきたい」と喜びをかみしめた。

 節目の1勝にも笑顔はなかった。大量援護をもらいながら2回に中村に右前適時打、6回には先頭・山田に左翼席へ6試合連続被弾となるソロを許した。4回以外は毎イニング走者を背負い、7―2の7回に安打と四球で出塁を許し、1死一、二塁で降板。「あの点差ですし、投げ切らないといけない場面。ああいうところで降りているようじゃまだまだ」と、ベンチでは悔しさをにじませた。

 それでも試合前から気温36・3度の猛暑にも負けず、最速151キロの直球にフォーク、スライダーで試合を組み立て「ホームランは避けないといけないので反省はあるけど、なんとか最少失点に抑えられてよかった」と汗を拭った。

 目指すのはまだまだ先だ。今季はエースとしての責任も増し、「理想としているものが出ない時、イライラしちゃうことがある」と勝ちがついても思い悩むことが多くなった。そんな時、TikTok(動画投稿アプリ)で偶然流れてきた言葉が響いた。「(アニメ)ルパン三世の中に、『俺って人生の視聴者は俺だけだ。だったら俺が続きを見たくなるような物語じゃないと意味がないだろ?』という言葉がある。僕、その言葉が大好きでね」

 ドラフト6位指名からはい上がり、昨年のWBCでは世界一を経験。エースへと成長したが満足はできない。リーグ優勝、日本一、自身のタイトル獲得―。「僕の人生の視聴者は僕しかいない。たくさんの人と関わってきているけど、最後に決めるのは自分。僕がワクワクするような人生を送りたい」。チーム、ファンのため勝利を目指すことはもちろんだが、何よりも自身が満足するものを追い求め、日々腕を振っている。

 積み上げた50勝をかみしめながら「記録も伸ばしていけたらと思います」と背番号20。物語の最後をハッピーエンドで締めくくるべく、戸郷の挑戦は続く。(水上 智恵)

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