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【明日の金ロー】「1対200」は実際の戦争では考えられない? 「キングダム 運命の炎」

スポーツ報知 2024年7月11日 21時0分

 12日の金曜ロードショー(後9時)は3週連続の「キングダム」シリーズ放送の最終回。昨年公開された「キングダム 運命の炎」が枠を45分と大幅拡大し、本編ノーカットで地上波初登場となる。同日公開のシリーズ最新作「―大将軍の帰還」を見る前に、ぜひともチェックしておきたいところだ。

 前作「―遥かなる大地へ」で描かれた「蛇甘(だかん)平原の戦い」から時を経ずして、隣国の趙の大軍勢が秦に侵攻を始めた。若き王・エイ政(吉沢亮)は趙に対抗すべく、長らく戦場から遠ざかっていた伝説の大将軍・王騎(大沢たかお)を総大将に任命。蛇甘平原の戦いでの武功を評価され、百人将となった信(山﨑賢人)も王騎の下での修業を経て、戦いに参加する。

 王騎により、「飛信隊」の名前をもらった信率いる一隊は、趙の武将・馮忌(ふうき、片岡愛之助)の首を取るという奇襲の特殊任務を与えられた。たった100人で2万人の大軍隊に挑む信と仲間たち。彼らが取った行動は。そして任務は成功するのか―。

 「少人数で敵の懐に入り込み、相手を倒す」というのは、「―遙かなる大地へ」での戦いに通じるところがあるが、前回と異なるところは「勝手に」突っ込んでいったのではなく、命を受けてのもの。さらに、ラスボスが将軍となったことからスケールが大幅にアップした。敵の数との比較は「100対2万」と、その差は200倍。「実際の戦争だったら、そんなのありえないだろ?」と感じるが、歴史に残る戦いではどうだったのだろうか。

 日本で「奇襲」と聞いて真っ先に頭に浮かぶのは、「桶狭間の戦い」だろう。戦国時代、織田信長が今川義元を討った一戦は何度もドラマや映画で描かれている。この時の両軍の戦力は、諸説あるものの織田軍が約3000人、今川軍が約2万5000人と言われている。戦力差は「1対8」だ。

 一方、中国では本シリーズの舞台から約250年後の1世紀、前漢と後漢の間の「新」の時代に起きた「昆陽の戦い」が”ジャイアントキリング”として知られる。現在の河南省にあった昆陽城に立てこもった後の後漢の初代皇帝・光武帝こと劉秀が、新の皇帝・王莽(おうもう)の軍を破った戦い。これが「8000対40万」だった。それでも、比率でいうと「1対50」だけに、本作で描かれている戦いがどれだけ「無理ゲー」なのかが、よく分かるだろう。

 ところで、本作が興収56億円と昨年の邦画実写ナンバーワン作品となったのは、戦闘シーンだけでなく若きエイ政が趙の人質として生活していた時代に出会い、深い闇から救い出してくれた恩人・紫夏(杏)とのエピソードが描かれていることも大きいのではないか。原作でも人気の高いエピソードだけにストーリーを知っている人は多いと思うが、紫夏が登場するシーンで印象に残ったせりふがある。

 それが「受けた恩は全て次の者へ」というもの。幼い紫夏に対し、父が諭すように伝えるのだが、この言葉は本シリーズのテーマの一つにもなっているのではないか。信は多大な影響を受け、生涯の友となる約束を交わしながら生涯を終えた漂(吉沢、二役)が信じたエイ政に、心の中では”恩”を返したいと思っていることを感じさせる。まさに「次の者」への恩返しと言えるだろう。(高柳 哲人)

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