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【大島幸久の伝統芸能】市川團十郎と松本幸四郎が昼夜でガチンコ勝負

スポーツ報知 2024年7月14日 12時0分

◆歌舞伎座「七月大歌舞伎」(24日千秋楽)

 市川團十郎(46)と松本幸四郎(51)が昼夜でガチンコ勝負をしている。正確に言えば成田屋組、高麗屋組の対決。ともに近頃、珍しい一本立て狂言、ケレン味たっぷりの宙乗りを見せる“七月夏の陣”である。

 團十郎は昼「星合世(ほしあわせ)十三團・成田千本桜」で、「義経千本桜」に出てくる弁慶、平知盛、いがみの権太など13役早替わり。他の布陣は中村梅玉、雀右衛門、児太郎らが脇を固め、令和元年以来の再演だ。

 團十郎で良かったのは知盛。序幕・渡海屋の場で白装束の姿は品、怨(うら)みの決意が浮かび、大物浦の場になると目を剥(む)いて火を吐くような声の大見得(みえ)。宙乗りを2回披露し、幕切れの知盛の霊に妖気さが満ちた。

 幸四郎は夜「裏表太閤記」で豊臣秀吉、鈴木重成、孫悟空の3役。秀吉と明智光秀の抗争の物語だ。脇の布陣は父・白鸚、息子の染五郎と親子3代共演と人気花形の尾上松也、右近ら。二世猿翁による初演の昭和56年以来43年ぶりの上演だ。

 宙乗りは大詰1場。秀吉の夢の中に出てくる。瓢箪(ひょうたん)を手に明るく楽しそうないい笑顔をして宙を舞う場面に客は沸いた。2幕6場では本水を使った大滝での立ち回り。重成の息子孫市の染五郎、光秀の松也と大暴れだった。

 高所恐怖症の私としては宙乗りを恐れない役者を尊敬するが、2組の対決は昼勝て、夜勝てと観客の応援合戦を含めてまあ、痛み分け。一方で、いずれできれば近いうちに「勧進帳」で幸四郎、團十郎が弁慶、富樫を日替わりで交代するガチンコ勝負が見たいねえ。(演劇ジャーナリスト)

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