◆第106回全国高校野球選手権 宮城大会▽3回戦 仙台育英2―0東北(15日・石巻市民)
宮城では、身長193センチで最速151キロを誇る仙台育英の山口廉王(れお)投手(3年)が東北との3回戦に先発し、9回途中まで無失点の好投。9球団のスカウトが視察に訪れ、大物感あふれる投球に高評価を与えた。
この夏初めてのマウンドで、大型右腕の剛球がうなった。193センチの仙台育英・山口はロッテ・佐々木朗希のように左足を高く上げるダイナミックなフォームから140キロ台の直球を繰り出し、6安打を浴びながらも要所を締めて8回2/3を無失点。好敵手の東北を撃破しての8強入りに「初回から飛ばしていいぞと言われていたので、全力を出しました。途中で降板したけれど、皆に助けられて勝てました」と振り返った。
9球団のスカウトが熱視線を送る中、初回を3者凡退で上々の立ち上がりを見せた。4回には2死満塁のピンチも「自分の一番の球でいく」とこん身の直球を投げ込み、空振り三振でピシャリ。この日は最速148キロをマーク。4四球と制球に苦しみ、初回と8回以外は走者を背負いながらも、スプリットやカーブを織り交ぜて無失点でまとめ、須江航監督(41)も「悪いなりにもよく頑張ってくれた」とねぎらった。
高1の5月には中学時代から違和感があった右肘を手術し、2年春に本格復帰した。秋は学生コーチも務めたことで「周りが見えるようになった」と精神面でも成長し、3年春には背番号1をつかんだ。この夏も甲子園登板経験のある佐々木広太郎、武藤陽世(ともに3年)らを抑えてエースナンバーを背負い「いろいろな人の気持ちがこもった番号」と自覚十分の投球。視察した巨人・水野スカウト部長も「まだ安定感はないが、いいボールは投げている。粗削りでも将来が楽しみ」と評価した。
足を高く上げるところは似ているが佐々木のようにねじ伏せるタイプではなく、須江監督も「制球力もあって、変化球も悪くない。ただただ大型ロマン枠でなく、総合力のある投手になれるイメージが湧く」と期待を込める。可能性に満ちた右腕は、「下克上と言う目標がある。一戦必勝を忘れずに、次の試合も全力で戦っていきたい」。昨秋は県大会で敗れセンバツにも出られなかった。まずは県3連覇に向け、成長曲線を描き続けていく。(秋元 萌佳)
◆山口 廉王(やまぐち・れお)2006年5月14日、東京・大田区生まれ。18歳。田柄二小1年時に野球を始め、宮城・高崎中時代は宮城北部シニアでプレー。仙台育英では2年秋の地区予選で初のベンチ入り。3年春から背番号1。最速151キロ。球種はスライダー、カーブ、フォーク、スプリット。好きな言葉は「当たり前のことを当たり前に」。193センチ、95キロ。右投右打。
◆仙台育英の主な右腕
▽大越 基 89年夏に甲子園準V。92年ドラフト1位でダイエーに入団すると野手に転向。引退後は早鞆(山口)の監督に。今夏をもって退任する。
▽金村 秀雄(名前はのちに暁) 94年夏の甲子園で8強入りに貢献。同年ドラフト1位で日本ハムへ。
▽佐藤 由規 07年夏の甲子園で156キロを計測し、その後の日米親善野球では157キロをマーク。同年の高校生ドラフト1位でヤクルトへ。
▽佐藤 世那 2年秋(14年)に明治神宮大会を優勝。15年夏の甲子園準V。同年ドラフト6位でオリックスへ。