◆第106回全国高校野球選手権和歌山大会▽2回戦 和歌山南陵4-0紀北農芸(16日・紀三井寺)
和歌山大会では、3年生10人のみの和歌山南陵が初戦を制した。6月に発表されたばかりの“レゲエ”の新校歌に乗り、途中のアクシデントも全員野球で乗り切った。大阪大会では、全員両打ちの佐野が、5安打11四死球13得点で、7年ぶりの初戦突破を決めた。兵庫大会では、女子ゴルフのエビアン選手権でメジャー初Vを飾った古江彩佳(24)の母校・滝川二が4回戦に駒を進めた。
レゲエのリズムが球場に響き渡った。「Yeah Yeah Yeah…」から始まる新校歌を、選手は笑顔で口ずさんだ。
和歌山南陵ナインが、1歩前に進んだ。先発の松下光輝投手が、8回4安打無失点12K。113球の力投に、打線も本塁打含む9安打4得点で応えた。渡辺蓮主将は「人数がどうとかじゃない。結局出るのは9人、10人。僕たちは全力でできたかなと思う」と胸を張った。
同校は22年5月、給料の未払いを理由に教職員によるストライキが発生した。学校運営に問題が続いた影響を受け、現在は新たな生徒の募集や入学は停止している。ただ、逆境の中で生徒は奮闘。バスケ部は6人で夏のインターハイ出場を決めて注目を集めた。
夏は2年連続4強入りする野球部も、入学当初は12人いた3年生が2人減り、現在は10人で活動。実戦練習ができない分、打撃や守備練習を「質より量」でカバーし、全員が3~4ポジションを守れるように取り組んできた。
2回の攻撃前にも校歌が流れ、選手の背中を押した。4回に中村聖捕手が頭部死球を受けたが「ここまで10人で練習試合をたくさんやってきた上で夏の大会に挑んでいる。怖さはなくて、10人で戦い切れる自信がある」と岡田浩輝監督(27)。中村は治療後に復帰し、軽い肉離れでベンチスタートの畑中公平外野手も8回に代打で出場。まさしく“全員野球”で2時間2分を戦い抜いた。
学校は現在、経営体制を一新して生徒募集再開に向けて動く。3年生が引退後はいったん休部となり、来年以降は未定のため「今夏が、南陵としては一区切りの夏になる」と指揮官。校歌については「いま一歩ずつ前に進まなきゃいけない状況にある中で、それを歌っている歌なので、いい校歌なのかなと思います」。“最後の夏”に初の甲子園へ。10人が腕を組み、夢をつかむ。(瀬川 楓花)
◆和歌山南陵校歌(一部抜粋)
一歩前へ 今
手をつなぎやれること
一歩前へ 今
夢つかめ 今今今
一歩前へ
進もう笑おう
一歩前へ 一歩前へ
一歩 一歩ずつ進め
泥だらけのスニーカー
履いて旅しようぜ
くだらないことも
笑いに変えようぜ
たくさんの希望に
胸ならしてこうよ
仲間と腕組んで
夢つかみ羽ばたけ
◆和歌山南陵 和歌山・日高郡にある私立学校。2016年4月に、休校中だった国際海洋二高に代わって開校した。同時に創部された野球部は、オリックス2軍監督を務めた岡本哲司氏が初代監督を務めた。甲子園出場はなく、最高成績は県4強。新校歌は、作詞がシンガーの横川翔、レゲエシンガーのWARSAN、作曲が人気レゲエグループのINFINITY16。
◆話題になった主な校歌
▼大分・明豊 「明日への旅」は、シンガー・ソングライターの南こうせつが作曲、育代夫人が作詞。
▼愛知・至学館 「夢追人」は、元女子レスリング日本代表・伊調千春さんのアテネ五輪に懸けた青春をテーマに、地元紙記者が作詞作曲。「Jポップ校歌」と話題に。
▼群馬・健大高崎 「BE TOGETHER!」で始まるJポップ調。