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ポケットに遺骨しのばせ5回0封 金足農を決勝に導いた背番号9 大会前に急逝天国の父に「勝ったよ」

スポーツ報知 2024年7月20日 6時0分

◆第106回全国高校野球選手権秋田大会 ▽準決勝 金足農8―0秋田工=7回コールド=(19日・さきがけ八橋)

 秋田では、18年夏の甲子園で準優勝し、旋風を巻き起こした金足農が秋田工を8―0の7回コールドで破り、6年ぶりの優勝に王手をかけた。本職は外野手の近藤暖都(はると、3年)が今大会初登板初先発で、5回を3安打無失点、4奪三振。大会前に急逝した父にささげる力投を見せた。

 歓喜の瞬間まであとわずかだ。背番号9の近藤が5回を投げきり、2番手の花田にバトンを託した。「絶対吉田を休めて決勝まで温存するっていう気持ちで。絶対抑えてやるっていう気持ちで投げました」。18年当時のエースでオリックス・吉田輝星の弟・大輝(2年)は3試合連続完投中。計28回で356球を投げ抜いている。試合途中から雨の降る中、背番号1に出番を与えず、決勝進出に貢献した。

 180センチ、70キロの細身の左腕は今大会初登板。初回2死から三塁打を浴びたが、直後に4番を遊ゴロに仕留めると、マウンド上でぴょんと跳びはね、笑顔でベンチに戻った。「調子は3年間で一番よかった」。最速132キロながら、チェンジアップなどで凡打の山を築いた。3安打4K、無四死球。ゲームセットは右翼手として迎えた。

 天国の父に雄姿をみせた。大会開幕の2週間前、父の章(あきら)さんがくも膜下出血のため52歳で亡くなった。「父は練習に行けと言うと思う。落ち込んでいてもしょうがない」。火葬で見送るとすぐに練習に復帰した。試合の前にはいつも「フルスイングでいけ」と言ってくれた父。遺骨を小さな容器に入れ、ズボンのポケットにしのばせて最後の大会に臨む。「見守ってくれていたのかなって思いました。普段はあまり褒めてくれない人。今日くらいは褒めてくれただろうな。勝ったよと伝えたい」

 チームは3年生4人の完封リレーで7回コールド勝ち。21日に秋田商との決勝を迎える。「決勝は負けられない。チャンスを生かして1点でも多く積み重ねる。そういう戦いになる」と中泉一豊監督(51)。先発については「まあまあまあ。そうですかね」と言葉を濁しつつも、中4日となる吉田に託すつもりだ。近藤も「あと1勝。甲子園に向けて絶対勝ち取りたい」。一丸となった雑草軍団が再び秋田の頂点に立つ。(太田 和樹)

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