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【パリ五輪】陸上女子1万メートル代表・小海遥に恩師がエール「アフリカ勢に食らいつく気持ちで」

スポーツ報知 2024年7月27日 8時20分

 パリ五輪陸上女子1万メートル代表の小海(こかい)遥(21)=第一生命グループ=を指導した宮城・仙台育英高陸上部長距離女子の釜石慶太監督が、成長した教え子にエールを送った。“小海ワールド”とも言える独特の雰囲気で強豪にぶつかっていく。

 最初に小海を見たのは中2時の全国都道府県女子駅伝。画面上だったが印象に残る走りだった。

 「上体の使い方、腕の使い方が上手で、駅伝やロードに強いという感じ。記録は持っていなかったけど伸びしろはすごいな、という印象でした」

 その後勧誘のため話をする機会があった。だがそのときは正直、「脈はない」と思ったそうだ。

 「うちは親元を離れて寮生活だよ、と話したときにもう涙ぐんでいたので。ないだろうなと思ってました。その後見学に来てくれて、返事をくれた感じです。何がきっかけで決めてくれたのか、いまだに分からない」

 地元・新潟から遠く離れた宮城で過ごした3年間。そこには“小海ワールド”があった。

 「女子高校生だったらあれしたい、これしたいってあるじゃないですか。良くも悪くも無趣味でした、当時は。同期は4人いるけど誰とも戯れるタイプじゃないし、先輩にくっつくタイプでもないし、後輩を引っ張っていくタイプでもない。自分に集中できる環境というか、独特な世界観を彼女がつくり出していた。そこがまた謎で、魅力的で、限界が分からない、底が知れないという、面白いキャラクターですよね」

 競技に関してはけがに苦しんだ。それも大会前によく起きたという。2年時の全国高校総体直前、釜石監督は“荒療治”に出た。

 「1年のときは(6月の)東北総体直前でけが、12月の都大路もレース2日前にリタイア。このときも右足に大きなけがをしていたんですけど、『競技人生を左右するからスタートラインには立つぞ』と。テーピングぐるぐる巻きで走って、(3000メートルで)8位入賞ですから。普通だったら絶対棄権させます。ただ、このままだと絶対深みにはまって抜け出せなくなる、何をやってもうまくいかないことが続いてしまうと思った」

 苦しい経験が奏功したのか、その年の全国高校駅伝は男女アベックV。小海もエース区間の1区区間賞と貢献した。

 「インターハイで入賞したり都大路で優勝したり、そういう時に釜石先生だったからとか、育英だったからという言葉を頂いた時は、素直にうれしかったですね。普段は喜怒哀楽を表現するタイプではなくて、血も涙もない人間だと思っていたので(笑い)。選手をおだてながらやることもあるんですけど、遥はよく叱ってました。我慢強いし、打たれ強いので。表現が苦手なのかもしれないけど、逆に言えば気持ちの起伏がなく、どういう状況でも淡々と自分のやるべきことを徹底してやっていました」

 パリ五輪で小海が走る1万メートルはアフリカ勢が強力。上位入賞は厳しい状況だが、その中でもらしい走りを見せてほしいと願った。

 「とんでもない連中が相手なので、過去(の五輪)を見ても周回差がつくぐらいのレースになると思う。ただ遥の良さは後半の強さなので、1周差だけどアフリカ勢に食らいついていくぐらいの気持ちで走ってほしい。世界基準を経験して、もう1回といわずもう2回くらい五輪を狙ってほしいなと思います」

(取材・構成=有吉 広紀)

 ◆小海 遥(こかい・はるか)2003年1月20日、新潟・妙高市生まれ。21歳。新井中央小時に陸上を始め、新井中では2、3年時に全国都道府県対抗女子駅伝に出場。宮城・仙台育英では19年に全国高校総体3000メートル出場、同年の全国高校駅伝優勝。21年に第一生命グループに入社。今年1月、宮城の一員として全国都道府県対抗女子駅伝に出場して優勝。1万メートルのベストタイムは30分57秒67。身長160センチ。

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