柔道女子５２キロ級の阿部詩（２４）、男子６６キロ級の阿部一二三（２６）＝ともにパーク２４＝が２８日、同日兄妹（きょうだい）２連覇の快挙へ挑む。妹の詩は２１年東京五輪後、金メダリストとして柔道界の発展を願い、兄とともに行動に移してきた。重圧の中で日本女子４人目の連覇を目指す理由の一つを、柔道担当の林直史記者が「見ていた」。
阿部詩が、柔道界の未来も背負ってパリの畳に立つ。２３日に現地入り後は選手村内の練習施設で調整してきた。東京五輪は無観客だったが、兄妹での同日２連覇の偉業が懸かるパリ五輪は有観客で行われる。大会直前には「東京とはまた違った五輪になる。その雰囲気をしっかりとかみ締めたい」と話し、出陣を心待ちにしていた。
２１歳で迎えた自国開催の東京五輪で史上初の兄妹同日金メダルを成し遂げた。兄・一二三とともに柔道界を代表する存在となり、この３年間で競技全体を思う気持ちは強まった。日本の柔道人口は年々減り続けている。２０００年代は約１万人だったが、コロナ禍で打撃も受け、日本が金メダル９個と空前の大活躍を見せた東京五輪翌年も７５２４人にとどまった。
昨年６月、兄と一緒に出身地の兵庫県で小学生を対象とした冠イベント「ＡＢＥ ＣＵＰ」を初めて開催した。「小学生の試合だったりが減っていく中で少しでも貢献できたら」との思いから２人で話し合い、実現につなげた。自身も小学校低学年の時、故・古賀稔彦さんの柔道教室に参加した時のことを鮮明に覚えている。パリ五輪後には第２回の開催も計画している。子どもたちに憧れられる存在となった今、負けられない理由はまた一つ、増えている。
今大会はノーシードで臨む。２５日の組み合わせ抽選では厳しいブロックに入った。長野県出身の出口ケリー（カナダ）との１回戦に勝てば、第１シードのディヨラ・ケルディヨロワ（ウズベキスタン）が待つ。順当にいけば宿敵のアマンディーヌ・ブシャール（フランス）とは準決勝で当たる見通しだ。それでも「最後まで執念を持ちながら戦っていきたい」。覚悟を決め、連覇に挑む。