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【パリ五輪】白血病治療中一度だけ…「奈落の底に」 世界へ復活アピールした池江璃花子の母・美由紀さんが振り返る

スポーツ報知 2024年7月28日 6時0分

◆パリ五輪 第2日 ▽競泳(27日、ラデファンス・アリーナ)

 27日に競技が始まり、女子100メートルバタフライ予選で、3大会連続出場の池江璃花子(24)=横浜ゴム=が競泳ニッポンの初陣として臨み、57秒82の全体14位で準決勝進出を決めた。白血病の闘病による休養から復帰後では初、2016年リオ五輪以来2大会ぶりに個人で挑んだ五輪で、世界へ復活をアピールした。母、美由紀さんが闘病当時を振り返るとともに、娘の更なる活躍に願いを込めた。

 池江の白血病が発覚した2019年2月。母の美由紀さんは、自身が営む幼児教室「EQWELチャイルドアカデミー」で仕事中だった。病院に呼び出され、医師から宣告された瞬間を「映画みたいだなと」と、振り返る。涙するまな娘を隣に、母は気丈に振る舞った。

 「我が子が大病をしている。ショックは大きかったけど、事実は受け止めて何をすればいいんだろうと。泣いて治るんだったら泣くけど、治らないと分かっているので。病室を出てからは『もう、治すしかないよね』と話をしていました」

 10か月に及ぶ闘病生活。強い副作用も伴う治療中にも、お互いに弱音を吐かなかったという。治ると信じ、前を向いていた。

 「かわいそうな気持ちはあったけど『あなたはかわいそうな子』というふうにしないようには努めました。今はこういう状況にあるかもしれないけど、未来はもっとステキかもしれないと。決してかわいそうじゃない。今、乗り越えなければいけないだけ、という気持ちで接していました」

 それでも、一度だけ。治療中、副反応が最も強く出た時に、池江が「死にたい」と口にしたことがあった。壮絶な姿に、美由紀さんも思わず涙。それでも前を向き、娘に寄り添った。

 「寝たきりになり、口もきけないような状況になって。その時は、本当にかわいそうでした。トップアスリートだった子が奈落の底に落ちた姿を見るのは、親としてもつらかった。本人が頑張っている時は私も応援できるけど、『死にたい』と言った時は…やっぱり頑張れないという姿を見た時は、私も涙が流れてきてしまって。『そんなこと言わないで』『一緒に頑張ろう』。それくらいしか、かける言葉がありませんでした」

 闘病を経て、水泳に復帰後に直近の東京五輪に出場。昨秋にオーストラリアに渡る決意をしたが、屋外プールで日光が当たる環境など、心配は尽きなかった。池江の意志を尊重したい思いと、親心の同居。母としては止めたい思いもあったという。

 「今でも心配。陰で、主治医の先生に『やめて』と言ってくれないかと相談したりもしました。全身ウェットスーツを作ってもらったり。屋内だったらいいのにな、と思いつつ、でもあの子の人生だし。好きなようにさせてあげたいな、と」

 東京五輪出場、昨年の世界選手権は個人で出場など着実に階段を上ってきた池江。ただ母として、アスリート・池江璃花子への期待は五輪出場にとどまらない。

 「感動するタイミングはあの子の持っている記録は全部日本記録。日本記録を出した時かな、と。まだその瞬間を迎えていないから分からないけど、そういう思いで応援します」

 まだ復活ストーリーの序章。母娘で完全復活をその先に見据えている。

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