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「目指してきた理想的な相撲が完成してきた」休場明けの照ノ富士が優勝決定戦制し名古屋初&10度目V

スポーツ報知 2024年7月29日 5時45分

◆大相撲名古屋場所千秋楽(28日・ドルフィンズアリーナ)

 2場所連続途中休場明けの横綱・照ノ富士が12勝3敗で並んだ東前頭6枚目・隆の勝との優勝決定戦を寄り切りで制し、3場所ぶり10度目の優勝を果たした。かねて目標としてきた2ケタ優勝と名古屋開催初Vをダブルで達成した。1965年から名古屋場所の会場となったドルフィンズアリーナ(愛知県体育館)では最後の開催。来年から近隣の「IGアリーナ」に移る。秋場所は9月8日に東京・両国国技館で初日を迎える。

 優勝決定戦を制すと、大歓声の中で照ノ富士は土俵上に仁王立ちした。史上15人目の2ケタ優勝を果たし、花道の奥では部屋付きの宮城野親方(元横綱・白鵬)から背中を叩かれながら祝福を受けた。涙する付け人も。ただ本人は賜杯を受け取る際も表情を崩さず。土俵下でのインタビューで名古屋初Vの話題を向けられてようやく和らぎ「応援してくださっていた方々の前で1回でもいいから、いい姿を見せたい思いで頑張った」と喜びをかみしめた。

 琴桜に敗れて3敗で並んだ隆の勝との決定戦。14日目に金星を配給した相手に右のど輪を食らい上体を起こされると、もろ差しを許した。だが下がりつつも左の小手で振りながら、右をねじ込んで耐えた。逆襲に転じ、左上手も取っての寄り切り。追いつかれた状況に嫌な雰囲気も漂ったが「どっしりと構えていこうと思っていた」と百戦錬磨の横綱は動じなかった。

 2場所連続途中休場明け。師匠の伊勢ケ浜親方(元横綱・旭富士)は稽古不足を懸念も、蓋を開けてみれば圧力をかける相撲が光り、無傷10連勝。師匠は「腰も膝も悪いから、ああいう相撲を取っていいのかな」と語るほどだったが、“リミッター解除”で突っ走った。照ノ富士は「親方にはずっと『前に落ちてもいいんだ』と言われてきた。まわしを取らないと相手に圧力をかけることができなかったが、目指してきた理想的な相撲が少し完成してきたかな」。確かな手応えをつかんでの復活Vとなった。

 2021年秋場所の新横綱から、優勝は6度目。最近4度は休場明けでの賜杯獲得となった。八角理事長(元横綱・北勝海)は「立派だ。一人横綱で、追い詰められての優勝。グッとくるものがあった」と賛辞を贈った。日頃から目標にしてきたV10を達成。次なるターゲットと問われた照ノ富士は「11回目でしょ」と力を込めた。ドルフィンズアリーナ最後の土俵で、最高位が力の違いを見せた。(三須 慶太)

 ◆照に聞く

 ―目標の2ケタVを達成。

 「ホッとしている。皆さんと約束してきたことが果たせた。目標を立ててやってきて、良かったと思う」

 ―決定戦の心境は。

 「その日の一番に自分の今できることをやるだけ。結果につながって良かった」

 ―本割で敗れ、どう気持ちを切り替えたか。

 「何回もそういう状況で取ってきたので、全然変わらなかった」

 ―師匠は稽古不足を懸念。

 「自分も一緒。万全になることはない」

 ―ドルフィンズアリーナ最後の優勝力士に。

 「(名古屋場所は)ここしか知らないが、最後ということで自分の思い出にも、しっかり残したいという気持ちがあった」

 ―来場所以降へ。

 「入門して14年、目指してきた相撲が完成した実感が少しある。それをもっとできるように鍛えていく」

 ◆照ノ富士 春雄(てるのふじ・はるお)本名・杉野森正山。1991年11月29日、モンゴル・ウランバートル市生まれ。32歳。伊勢ケ浜部屋。鳥取城北高から間垣部屋(当時)に入門し、2011年技量審査場所で初土俵。14年春場所に新入幕。15年夏場所の初優勝後に大関昇進も、両膝のけがなどで序二段まで転落。20年7月場所で再入幕。21年名古屋場所後に第73代横綱に昇進し、同8月に日本国籍を取得した。幕内優勝10度。得意は右四つ、寄り。192センチ、176キロ。既婚。

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