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【パリ五輪】阿部詩まさかの敗戦 流れを大きく変えた「組み手の変化」…アテネ金メダリストが「見た」

スポーツ報知 2024年7月28日 22時15分

 阿部詩敗退の衝撃の大きさに言葉が出なかった。技に入るスピードの速さ、力強さと今回の調子は良さそうで安心して見ていられたからだ。

 ケルディヨロワ戦も技ありを奪うなど優位だったが、組み手の変化が展開を大きく変えた。なかなか引き手が取れなかった詩は2分17秒あたりで相手の前襟を持った。それまでは引き手で袖口を持って相手の力を押さえていたが、詩が前襟を持つことで、ケルディヨロワが左の袖口を引いて体を寄せることができた。間合いを詰めやすくなり、得意の接近戦に持ち込めるチャンスが広がった。

 シードを取ることより体調を重視したことで、第1シードと2回戦で当たる組み合わせとなったが、強い人はどこにいても勝てる。むしろ、ケルディヨロワの方が「なんで詩がここに入ってきたの?」と思ったはず。だからこそ、向こうも覚悟を持って戦いに来ていた。普通なら勝ったら大喜びするだろう。でも、詩に勝ったとしてもここは通過点。ケルディヨロワの態度に強い気持ちを見た。

 私は、優勝を目指した96年アトランタ五輪初戦でシルバ選手(ブラジル)に負けた映像をなかなか見ることができなかった。負けを認めない限り、前に進めないと思ったのは、3度目のアテネ五輪の前だった。五輪の借りは五輪で返せとよく言われる。詩はこのままでは終われないと思う。そのためには少し休んで、気持ちを整えること。時間はかかるかもしれないが、再び強い詩を見せてくれることを願っている。(04年アテネ五輪女子78キロ級金メダル、警視庁男子監督・園田教子)

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