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【パリ五輪】阿部詩が負けた 2回戦敗退に号泣…28年ロス五輪への挑戦「落ち着いてから考えたい」

スポーツ報知 2024年7月29日 7時0分

◆パリ五輪 第3日 ▽柔道(28日、シャンドマルス・アリーナ)

 女子52キロ級で東京五輪金メダルの阿部詩(24)=パーク24=が、まさかの2回戦敗退を喫した。第1シードのディヨラ・ケルディヨロワ(ウズベキスタン)に先に技ありを奪って優位に進めていたが、谷落としで一本を奪われた。21年東京五輪に続き、男子66キロ級の兄・一二三(26)=パーク24=と兄妹(きょうだい)同日連覇の偉業を目指したが届かず、畳を下りると大粒の涙を流した。

 「あー、あぁー、うわあああ!」。悲痛な叫びがシャンドマルス・アリーナに響き渡った。阿部詩は敗戦の瞬間、目を見開き、顔を覆って座り込んだ。体に力が入らず、よろよろと畳を下りた。支えてくれた平野幸秀コーチの胸に顔をうずめると、泣き崩れて動けなくなった。フランスの柔道ファンから温かい拍手と「ウタ、ウタ」コールが起こる中、抱きかかえられ、約3分間かけて出口に向かった。五輪女王の連覇への挑戦が終わった。

 世界ランキング1位のケルディヨロワとの2回戦。2分過ぎに内股で技ありを奪った。優位に試合を進めていたが、残り1分を切り、相手の組み手を嫌がり、少し腰を引いた瞬間を狙われた。捨て身技の谷落としで体を浮かされ、畳に背中を叩きつけられた。

 世界に衝撃が走った敗戦。直後は過呼吸のような状態に陥り、広報担当者が「今は取材を受けられる状態ではない」と説明。一二三には会わず、観客席で家族に「お疲れさま」と声をかけられ、軽食を口にすると少しだけ落ち着きを取り戻した。約4時間後。取材エリアで「私自身が弱い。全てを懸けてこの一日のためにやってきたので、負けた瞬間は冷静に自分を保つことができなかった」。時折、声を詰まらせながら、心境を語った。

 東京五輪は肩に不安を抱え、日常生活に支障があるほどの状態で戦っていた。五輪後に両肩を手術した。本来であれば苦しいはずのリハビリの時間も、独特の感性で乗り切った。日々、少し肩が上がるようになるなど、わずかな喜びに幸せを感じた。「柔道を始めて東京五輪まではひたすら突っ走ってきた。ゼロから100に持っていく過程がまた味わえるんだと思うと、楽しかった」と前向きに過ごし、復帰後は無敗を守ってきた。

 公式戦の黒星は19年11月のGS大阪大会でブシャール(フランス)に敗れて以来、約4年半ぶりだ。

 それだけに五輪の舞台での1敗のショックは想像を絶する。28年ロサンゼルス五輪での雪辱の思いを問われると「今は落ち着いてから考えたい」と話すにとどめた。盤石だったはずの詩が、五輪の魔物にのみこまれた。(林 直史)

 ◆阿部 詩(あべ・うた)2000年7月14日、神戸市生まれ。24歳。5歳で柔道を始め、夙川学院中、高から日体大を経て23年4月からパーク24所属。17年GPデュッセルドルフでワールドツアー史上最年少16歳で優勝。世界選手権は52キロ級で18、19、22、23年の4度優勝。東京五輪金メダル。得意技は内股、袖釣り込み腰。159センチ。

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