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【パリ五輪】阿部一二三の金メダルに妹・詩も泣いた…きょうだい連覇ならずも兄は再び頂点

スポーツ報知 2024年7月29日 1時5分

◆パリ五輪 第3日 ▽柔道(28日、シャンドマルス・アリーナ)

 男子66キロ級で阿部一二三(26)=パーク24=が妹の思いも背負い、2連覇を果たした。決勝でウィリアン・リマ(ブラジル)を下した。連覇は日本勢8人目で、男子では5人目。兄妹同日連覇を目指した妹で女子52キロ級の阿部詩(24)=パーク24=が2回戦で敗退。衝撃の結果にも動揺することなく、21年東京五輪に続いて頂点に立った。

 一二三が、詩の分も戦い抜いた。エモマリ(タジキスタン)との準々決勝では試合中に鼻血が出て、2度も畳を下りるアクシデントがあったが、合わせ技で一本勝ち。準決勝も初めて延長戦に突入した直後、払い腰で技ありを奪って仕留めた。決勝も制し、日本男子5人目のV2を決めた。

 スタンドでは妹が泣いた。兄がが金メダルを獲得すると、顔を手で覆って涙。そして目を赤くしながら拍手を送った。

 史上初のきょうだい同日金メダルに輝いてから3年。パリ五輪は「兄妹で2連覇」が2人の合言葉だった。だが、自身の初戦の3試合前。詩がケルディヨロワ(ウズベキスタン)に衝撃の敗戦を喫した。一つの大きな目標はなくなったが、59秒で合わせ技一本で勝利。動揺を見せることなく、その後も勝ち進んだ。

 東京五輪は丸山城志郎(30)=ミキハウス=と激しく代表を争い、1敗も許されない崖っ縁から勝ち続けた。日本柔道初のワンマッチ代表決定戦に持ち込み、24分間の死闘を制した経験値は誰にも負けないと自負する。「東京五輪までの過程で一回りも二回りも強くなっていると実感できた。その時の経験や気持ちが自分の強み」。極限の戦いへ挑んだ精神状況や調整方法をパリに向けて研ぎ澄ませ、この3年間は無敗で駆け抜けた。

 5月にプロボクシング世界4団体スーパーバンタム級統一王者・井上尚弥の興行を東京ドームで観戦した。井上が初回に初ダウンを奪われた姿に自身を重ねた。「あの井上尚弥選手でもダウンさせられることがある。柔道ではあれが一本なら、1回戦で終わり。勝負の怖さを感じ、気が引き締まった」と振り返った。

 これまで以上に徹底した準備で臨んだ。減量一つとっても約6週間をかけて、じっくりと落とした。時間をかければかけるほど我慢の時間は長くなるが、数日前には「ほぼ終わっている」という状態にまで作り上げた。

 22年世界選手権(タシケント)では圧倒的な強さにブーイングを浴びたこともあった。今大会もアウェーを想定して臨んでいたが、柔道大国フランスの目の肥えた観客からは試合のたび、称賛の拍手と歓声を送られた。堂々と力強く、王者の戦いを見せた一二三は以前から、野村忠宏氏の最多3連覇を超える4連覇を公言してきた。壮大な目標へ、折り返し地点に立った。

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