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東京五輪前の厳しい経験が大一番で生きた…アトランタ五輪金メダル・中村兼三氏が見た阿部一二三の強さ

スポーツ報知 2024年7月29日 14時0分

◆パリ五輪 第3日 ▽柔道(28日・シャンドマルス・アリーナ)

 柔道男子66キロ級で阿部一二三(26)が2連覇を果たした。決勝でビリアン・リマ(ブラジル)に合わせ技一本で下し、日本柔道通算50個目の金メダルで、連覇は8人目となった。アトランタ五輪男子71キロ級金メダルの中村兼三氏が、阿部一の精神的な強さを語った。

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 一二三の強さが光る連覇だった。ライバルたちが研究、警戒する中で自分の柔道を出し切るのはなかなかできることじゃない。両袖を持ちながら、うまくコントロールして袖つり込み腰や大外刈りなど多彩な技につなげる。あの形になったら一二三は強い。

 初戦を迎える前に、妹の詩が敗れた。目標だった兄妹での連覇が消え、動揺はあっただろうし、柔道の怖さを改めて感じたと思う。序盤は安定していないようにも見えたが、冷静さは忘れていなかった。順調に勝ち続けてきた妹に対し、兄は東京五輪前、国内の代表争いで敗戦を喫したこともあった。その経験が、大一番のきつい戦いの中で生きたと思う。詩の思いを受けながら、そういう状況でも勝ちきる技を見せたのはさすがだ。

 パリに到着した時の表情を見たが、頬がこけていた。減量を計画的に長い時間かけながら慎重にやったのだろう。負担なく体重は落とせるが、そのぶん、リカバリーが遅くなる。それでも、勝ち上がるにつれ、リカバリーができて、体が反応して動くようになった。

 五輪3連覇は頭の中にあると思うが、まずは体を休めて、次に向けてスタートしてほしい。一二三の柔道は強引に技をしかけて勝利にもっていくスタイル。その力強い柔道を幹に、枝葉をつけていくことが大事になる。足技や、力を抜いた技のキレを身につけていけば、柔道の幅は広がり、より強くなるだろう。

 ライバルたちは次の五輪に向けて、すでに動いている。若い選手が一二三に挑戦して、それを王者が跳ね返す―。国内で切磋琢磨(せっさたくま)すれば、66キロ級の選手層が厚くなるし、レベルもさらに上がっていく。楽しみになってきた。(1996年アトランタ五輪男子71キロ級金メダル、旭化成総監督)

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