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柔道大国フランスの熱気はすごかった 当たり前に勝つことの難しさ 日本の強さ改めて感じた…石川佳純さん特別コラム「エースの思い」

スポーツ報知 2024年7月31日 8時0分

 スポーツ報知特別コラムニストで卓球女子3大会連続メダリストの石川佳純さん(31)が、初めて外から見て感じた五輪を語る「エースの思い」。第2回のテーマは柔道。男子66キロ級の阿部一二三(26)、女子で52キロ級の阿部詩(24)=ともにパーク24=や48キロ級の角田夏実(31)=SBC湘南美容クリニック=の試合を現地で観戦し、優勝候補として臨む難しさ、きょうだいや家族の支えの大きさに思いをはせた。

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 競技が始まり、最初の2日間は柔道会場で観戦しました。阿部詩さんは2連覇が懸かったプレッシャーも大きかったと思いますが、4年に一度の五輪の舞台でメダルを取ることの厳しさを改めて実感した試合でした。この舞台に全てを懸けていたからこそ、試合後の彼女の涙を見て、どれだけ悔しいんだろうと、詩さんの気持ちを思うと言葉が出ませんでした。

 一二三さんには試合後にインタビューをさせてもらいました。詩さんが負けた時は「すごく動揺もあったけど、兄として絶対負けられないという思いが強くなった」と話されていました。2人とも東京五輪で金メダルを取ってから、大きなプレッシャーがあったと思いますが、この3年間、お互いに高め合って頑張ってきたんだなというのをすごく感じました。だからこそ、動揺する気持ちもパワーに変えて、さらに攻めて技をかけていく一二三さんの強さは本当に感動しました。

 私の妹(梨良さん)も卓球をやっていましたが、東京五輪の選考レースの時は一緒についてきてくれて、サポートしてくれました。妹の存在にすごく励まされましたし、負けた時も「次があるよ。大丈夫、大丈夫」と言ってくれたことは、すごく心強かったです。

 負けて落ち込んだ時には、頑張ってきたことを否定されたような気持ちになると思います。でもその時に家族や周りの人の支えで、もう一回頑張ろうと思うことができます。詩さんもご家族の温かいサポートの中できっと立ち直って、また強い姿を見せてくれると期待しています。

 当たり前に勝つと言われている選手が、当たり前に勝つことがどれだけ難しいか。それは自分自身が五輪に出場して、経験したことです。角田さんの金メダルを見た瞬間は涙が止まりませんでした。私と同じ31歳で、初めての五輪。絶対に優勝と言われてきて、どれだけ大きなプレッシャーと闘ってきたんだろうなって。それを乗り越えた姿にすごく感動しました。

 角田さんに試合後のインタビューで「当たり前に勝つことの大変さ」を聞いた時に、少し涙が見えました。本当に大きなプレッシャーと闘っていたんだなと、あらためて感じた瞬間でした。年齢が上がってくると自分自身との闘いはもちろん、若手も出てきたり、いろんな面で苦しい時間が多くなってきます。ここまで諦めずに頑張ってきた角田さんに、心からおめでとうございますと伝えたいです。

 柔道会場のお客さんの目も肥えていて、本当に熱狂的でした。フランスは柔道の競技人口がすごく多くて、柔道大国と言われていると聞きましたが、納得の熱気でした。その中で勝ち切った阿部一二三さんや角田さん。日本の柔道の強さを改めて感じました。(卓球女子団体12年ロンドン銀、16年リオ銅、21年東京五輪銀メダリスト・石川 佳純)

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