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橋本大輝、鉄棒での落下は高校3年間でわずか1回…アテネ金メダリスト・冨田洋之氏「ぶら下がり方が上手」…パリ五輪

スポーツ報知 2024年7月30日 23時10分

 29日の男子団体総合決勝で日本が2016年リオデジャネイロ五輪以来、2大会ぶり8度目の金メダルを獲得した。エースの橋本大輝(セントラルスポーツ)があん馬をミスした中、萱和磨主将らが演技と励ましの声でカバー。全員の力で2大会ぶりの金メダルを獲得した。最終種目の鉄棒を成功させて自信を取り戻した橋本は31日の個人総合で2大会連続の金メダル獲得を目指す。

 橋本が夢をかなえた。何度も思い描いてきたこのシーン。自らの鉄棒で日本の団体金メダルを決め「正直、苦しかった」という3年間の苦悩を晴らした。3・267点差から中国の連続ミスで、自分の演技に委ねられた金メダルの行方。21年東京五輪、23年世界選手権も制した得意種目に自信はあった。F難度「リューキン」、G難度「カッシーナ」と高難度の離れ技を決め、ラストの着地も最小限にまとめ切った。

 体操選手の中では大型の167センチ。鉄棒でのダイナミックさは目を引く迫力がある。個人総合の五輪連覇で、同じく鉄棒を武器にしてきた内村航平さん(35)は「個人総合の選手で、スペシャリストと遜色ないくらいの難度ができる」と橋本の器用さを強さに挙げる。

 市船橋高時代には、異常なスピードで高難度の離れ技を習得。神田真司総監督は「落ちない人は落ちない。どれだけバーから離れても手が伸びていっちゃう。それは後から手に入れられる能力ではない。これは彼が持ってる能力」。高校3年間、記憶にある鉄棒での落下はたった1回だという。

 04年アテネ五輪、団体決勝の最後に鉄棒を決め、名実況「伸身の新月面が描く放物線は、栄光への架橋だ」を生んだ冨田洋之氏は、順大時代に4年間、橋本を指導し「ぶら下がり方が上手」と評価。一見、簡単な動きだが、競技においては奥が深い。「技をしようとしたときには力が入ったり、試合になると縮こまってしまったりするが、自然体で動けるところが彼の特徴。変な力みなく、雄大な離れ技につながる」。どの時代においても、鉄棒のセンスは光っていた。

 橋本は少年の頃、金メダルを獲得した冨田氏に握手をしてもらった。そのときの喜びは今でも色濃く胸に刻まれている。アテネの冨田氏、リオの内村氏、最後は必ずエースが決めてきた。橋本も歴代のエースに続き、パリの地で“栄光の架橋”を描いた。(小林 玲花)

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