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仲間が明かすスケボー・白井空良の素顔、失意の東京から3年、努力を知り、花の都で輝いた笑顔…パリ五輪

スポーツ報知 2024年7月31日 7時0分

◆パリ五輪 第4日 ▽スケートボード男子ストリート決勝(29日、コンコルド広場)

 スケートボード男子ストリートで、白井空良(22)=ムラサキスポーツ=は4位だった。パリ五輪直前に体調不良もあったが、東京五輪予選敗退から大健闘だった。白井が鍛錬を重ねるのは、2020年11月に自身がプロデュースしてオープンした神奈川・寒川町の「THE PARK」。拠点としてほぼ毎日練習に訪れる白井の東京五輪からの進化やパリ五輪を、同施設のクルーで自転車BMXフラットランド・プロライダーの田圓(たまる)尚人さん(32)が語った。(取材、構成=手島 莉子)

 メダルまであと一歩だった。最後まで果敢に攻め続けた白井を見た田圓さんは「体調が万全でないのも知っているので心配でした。でも予選も決勝も自分らしいスケートをしていた。笑顔を絶やさずに滑っていて感動しました」。試合前、田圓さんはパリ五輪で「彼の笑顔が見たい」と即答していた。「空良をかっこいいと思う時って集中しているときや技をやっているときもそうですが、終わった後の笑顔。すっごいかっこよく感じます」。田圓さんが期待する姿を、白井は花の都で体現していた。

 最高の環境が、白井を強くした。同施設が完成した20年11月前後から交流を持つ田圓さんは、白井の東京五輪予選敗退からの日々を、一番近くで見てきた。「当時はかなりくらっていました。すごい落ち込んで『やりたくない』っていうところまで行きました」。五輪の難しさを実感させられた。ただ、周囲からの温かい声かけで立ち直るのに時間はかからなかった。同学年でBMXフリースタイル・パーク、パリ五輪代表の中村輪夢(22)=ウイングアーク1st=と旅行に行くなどし「もう遊んだから頑張る」と約1か月で顔付きが変わった。

 東京五輪の悔しさを経て「もっとやらないといけない」と白井。「前までの空良は練習を知らなかった。大会に行ってやりたい技をやって、それで決めて勝ってきているから」と田圓さん。同施設のメンバーが、技を繰り返し練習することの重要性を教えたことで「『今日はこれを何回やらないと帰れない』とか決めていくようになりました。日々の目的を作るようになりました」。おもしろくなくても、できるまで練習。ウォーミングアップにもできない技の練習を取り入れ、鍛錬が日常化した。

 精神面も急成長。東京五輪前後は調子が悪いと自分にいらだち、練習場から出て行ってしまうこともあった。しかし今では「イライラしてもいったん休憩して、練習に戻る。『うまくいかないから映像撮ってほしい』とか自分でコントロールできるようになっています。その成長に対してうれしい」と田圓さんはほほえんだ。

 白井には人をひきつける魅力がある。10歳年上の田圓さんが人知れず落ち込んでいるときは白井だけが気がつき、声をかけてくるという。2時間以上話しを聞いてくれることもあり「モヤモヤしたときの相談相手は空良ですね。基本なめてきますが、なんだか許せてしまいます」と笑った。互いに支え合える居場所が、安定した白井のメンタルを作る基盤でもある。

 パリ五輪の決勝後、白井からすぐに電話がかかってきた。「『本当に悔しいわー!』って言っていました。でも万全でない状態の中で良いパフォーマンスができたと思っていると思います」。逆転金メダルを狙ったベストトリックの最終5本目。乗り切ったと思ったが、着地後にバランスを崩した。メイクまであと一歩。「あと少しだった。本人としても気持ち良かったんじゃないかなって思います」。

 次の目標は明確だった。「本人の口から『いや~LA頑張るわ~』って言葉が出ました」と28年ロサンゼルス五輪は既に見据えていた。「東京五輪で予選落ちして、やめたいって思ってしまうくらい悔しかったけど今回は4位。大健闘。金メダルは狙える位置にいるってわかっているからこそLAへ。すがすがしい気持ちで次へっていう感じだと思います」。

 若手がひっきりなしに台頭するスケートボード界だが、白井、堀米雄斗の存在はこれからも不可欠だ。「次の4年後に向けて、僕たちは変わらずにサポートする日常になりますね。また4年後、やってくれると思います」。心から活躍を願ってくれる仲間の存在が、白井を一層強くしていく。

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