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歴史的勝利まであと10秒…会場の空気作り上げるのもチーム力 渡辺雄「この観客の中で、審判も吹いてしまうというか」…パリ五輪

スポーツ報知 2024年7月31日 22時48分

◆パリ五輪 第5日 ▽バスケットボール男子1次リーグB組 日本90―94フランス(30日、リール=ピエール・モロワ競技場)

30日の男子1次リーグ(L)B組で、世界ランク26位の日本は、21年東京五輪銀メダルで同9位の地元フランスに延長の末、90―94で敗れた。歴史的大金星を目前に3点シュートを放った相手を止めようとした司令塔・河村勇輝(23)=横浜BC=が痛恨のファウル。残り10秒で4点のリードを追いつかれ、延長で力尽きた。日本は組3位以下が確定し、史上初の8強入りへ8月2日の1次L最終戦、ブラジル戦は勝利が最低条件となった。準々決勝(6日)は各組2位までと、3位のうち上位2チームが進む。

 完全アウェーと化した2万7000大観衆のアリーナで、河村はぼう然と立ち尽くした。「いい勝負をしに来たわけではない。勝ちに来ていた」。抱き寄せられた渡辺雄の胸元で悔しそうに現実を受け止めた。開催国の格上を追い込んだが、世界はそう簡単には勝たせてくれない。ほぼ手中にあった52年ぶり五輪白星は、するりとこぼれ落ちた。「もう勝ったと思った」と腰を上げたトム・ホーバス監督(57)は「最後のファウルが大きかった。本当に悔しい」とうなった。

 これが、五輪に潜む“魔物”だったのか。日本は224センチでNBA新人王の怪物・ウェンバンヤマ、216センチのゴベール擁する強豪に、粘り強くリバウンドに絡み、3点シュート(3P)は目標を超える43・2%。指揮官が「プランとピッタリ」と言うように、相手を乱し張り合った。だが、70―72の第4クオーター(Q)残り約8分、24得点と奮闘したエース・八村塁(26)=レイカーズ=が第4Qに2度目のアンスポーツマンライクファウルを取られ退場。追加罰則はないため、次戦は出場できるが、うつむき、コートを後にした。強力なセンター陣に対し、ファウルをしてでも止める戦略で、渡辺雄は「簡単に2点を取らせない、塁自ら犠牲になったプレーだった。責めることもできないし、審判が悪いとも思わない」。八村に代わって出た渡辺飛が獅子奮迅の活躍を見せ、日本は残り5分8秒で78―77と逆転。大黒柱不在も84―80とリード。フランスを土俵際まで追い詰め、勝利は目前だった。

 歴史的瞬間へのカウントダウンが始まった残り10秒。フランスのストラゼルが放った3Pは審判の笛とともにゴールに吸い込まれた。

 その時だった。チェックに走った河村にまさかのファウルの判定。“4点プレー”を献上し、同点とされた。3P6本を沈め29得点と活躍した河村が痛恨。後の写真や映像では相手に触れていなかったように見え、物議を醸した。しかし、河村は「(相手の)ファウルをもらう技術にやられてしまった」。チームから「ノーファウル」の指示もあったが、3Pを決めたストラゼルはこの日、同成功率57・1%と絶好調。そこをフリーにした守備の隙もあった。戦術だけでなく、経験値や会場の空気を作り上げるのもチーム力。渡辺雄は「この観客の中で、審判も吹いてしまうというか。(マークを)捨てなきゃいけない部分もあった」と冷静に分析した。

 確かに勝ち筋はあったが、点差以上に勝負どころでの差は明確だった。八村の退場、疑問の残るファウル判定も、「間違いなく大きな財産になる」と渡辺雄。次は最後のブラジル戦。史上初の8強へ、最低でも勝ちが絶対条件になる。最後の円陣では「まだ終わってない。チャンスある」と声を掛け合ったホーバスジャパン。立ち止まっている時間はない。(小林 玲花)

 ◆日本の決勝T進出は? 準々決勝には各組2位までと、3位のうち上位2チームが進む。B組は2連勝のドイツとフランスが組2位以上を確定させ、8強入り。2連敗の日本は3位以下が確定し、「3位枠」での決勝トーナメント進出を目指すことになった。最低条件はブラジル戦勝利。さらに他2組の3位との得失点差でも上回らなければならず、1点でも多く得点が求められる。

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