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内村航平さん体操決勝を振り返る 金メダルの岡に「炭治郎が重なった」連覇ならず橋本に「背負っているものは誰にも理解されない」…コラム

スポーツ報知 2024年8月1日 16時0分

◆パリ五輪 第6日 ▽体操男子 個人総合決勝(31日、ベルシー・アリーナ)

 初出場の岡慎之助(徳洲会)が個人総合で金メダルを獲得した。6種目合計で86・832点となり、頂点に立った。初出場で金メダルを獲得したのは前回東京五輪の橋本大輝以来、日本勢6人目の快挙。日本勢では同種目4連覇となった。12年ロンドン大会、16年リオ大会の体操男子個人総合を連覇した内村航平さんが、岡の演技、思い出を語った。

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 本当に最高でした。画面越しに試合を見ながら、自然と両手を突き上げていました。実は団体決勝の後、慎ちゃん(岡)から「個人総合、どうしたらいいっすかね?」って言われたんです。「慎ちゃん予選ノーミスでやったよね?そのままやればいいんだよ」って言って「ですね!」って。そのままやっちゃいましたね。

 今回は完全にあん馬が通った時点で「これ、いったな」「今日は慎ちゃんの日かな」っていう気がしました。中国の張選手がまず床でミスし、大輝もあん馬で落下。「これは普通の空気感じゃない」というのは分かったんですけど、その中で慎ちゃんだけ楽しそうに。そこが強かったですね。五輪って楽しまないとダメなんだなと改めて感じました。

 アニメ「鬼滅の刃」の主人公・炭治郎は戦いの最中、成長していく。今大会は慎ちゃんと炭治郎が重なりました。予選、団体決勝であざが出た【注】はずなんですよ(笑い)。僕が初めて出場した北京五輪を見ているような感覚というか。確かに僕も試合を楽しんでやってたからメダルを取れたのかなっていうのはあったので、興奮しましたね。

 「岡慎之助とは?」と言われると、美しい体操と着地の安定感。慎ちゃんを最初に見たのは小学生の高学年頃でした。めちゃくちゃ小さかったです。今、つり輪で彼がやってる「伸身新月面」というレベルの高い降り技は、小5くらいからやっていました。「とんでもねえ、ちっちゃいのいるな!」と思っていました。

 大丈夫ですかね、引退しないかなって心配(笑い)。いい思いしすぎて、「もう僕、お腹いっぱい」って引退しないで欲しい(笑い)。僕は3回目で団体金、個人総合は2回目の五輪でした。うらやましいのもあるし、悔しいのもあるし、でも頼もしい気持ちもあります。

 日本男子が個人総合4連覇。それもすごいですよね。現役の頃、「6種目やってこそ体操」と言って個人総合でずっと勝ってきて、それが一回り以上下の世代にもちゃんと受け継がれていることがうれしかったです。

 一方、連覇に挑む大輝が背負っていたものは、誰にも理解されないものだと思います。初出場の、さらに自国での五輪で金を取り、3年後に連覇へっていうのは、次に向かう意味で、僕よりもっと難しかったんじゃないかなと思います。

 僕は12年ロンドン五輪の個人総合で初めて金を取ってから連覇までの4年間、毎日練習で「正解じゃない」と思ってやっていました。「合ってる」と思った瞬間に「この連覇は止まるんだろうな」と思ったんです。

 大輝には、王者復活してくれないと困りますよ。これが吹っ切れた時、めっちゃ強くなると思います。今回、2人ともメダルを取れていなかったら多分、大輝の心が持たなかったと思うんです。でも慎ちゃんが取ったことで、大輝も多少楽になるだろうと思います。まさかここまで続くとは思いませんでしたが、やっぱり日本は個人総合で勝って、つないでいって欲しいです。

【注】物語の中で一定の条件を満たし、あざが身体に浮き出てくると、そのキャラクターは身体能力が飛躍的に向上。受けた傷も超スピードで回復する。

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