Infoseek 楽天

2大会連続「エペジーーン」歴史的快挙の舞台裏 21年東京金メンバーの宇山賢さん語った フェンシング男子エペ団体で銀メダル…パリ五輪

スポーツ報知 2024年8月3日 8時30分

◆パリ五輪 第8日 ▽フェンシング(2日、グランパレ)

 フェンシングの男子エペ団体決勝で、21年東京五輪金メダルの日本(加納虹輝、山田優、見延和靖、古俣聖)はハンガリーに25―26で敗れ、銀メダルを獲得。2連覇は逃したが日本は今大会、加納虹輝(JAL)がエペ個人で金、女子フルーレが団体銅メダルを獲得しており、3つ目のメダルとなった。21年のエペ団体メンバーの宇山賢さん(32)が、男子エペ躍進の裏側と今後への期待を語った。

×    ×    ×    ×

 東京五輪で男子エペ団体が初の快挙を成し遂げてから3年。日本が、フェンシングの母国フランスで再び決勝の舞台に立った。「世界で、日本がエペで勝てるとは思っていなかった」と宇山さん。一方で、自身が15年W杯で初の表彰台に立つなどベテランの見延らと男子エペをけん引する中、次第に次世代の視点が変わっていく空気を感じていたという。

 「僕のような古参の選手は当時、いかに相手に失敗をしてもらって、ちょっとでも上の順位にいくかという戦い方だった。それが、僕らがメダルを取れるようになると、若い選手の世界を見る視線が変わった。意識が変わり、あっという間に正統な勝ち方で相手を圧倒する選手が出てきた」

 その代表格とも言えるのが、今大会個人で日本初の金メダルを獲得した加納だ。宇山さんが「相手を凌駕する」というスタイルで、頂点に立った。

 「加納のスタイルはシンプル。自分の剣で相手の剣を排除して、突き刺す。一瞬のスピードとパワーが、圧倒的に強い。背の高い選手が外にいると基本的に有利と言われるが、一瞬で中に入っていく能力が抜群に高い。後にも先にもいないような、インファイターです」

 そして団体においては、ベテラン見延が精神的支柱だという。日本の強みはベンチワークのよさ。百戦錬磨の37歳が、どんと構え後輩に安心感を与える。

 「見延さんは、ベンチでのパフォーマンスが変わらない。例えば、うまくいってない時は静かになりやすい。見延さんももちろん悔しい、イライラもしているけど、すぐに他のメンバーに声をかける。最近は、ずっと負けてお通夜のような雰囲気になっている試合がない。それはやはり、見延さんがメンバーを鼓舞して選手が声を出すというような、チームの線が切れないようになっているからです」

 男子エペは、08年北京五輪後からウクライナ人のオレクサンドル・ゴルバチュク氏が日本代表コーチに就任。それまで日本になかった指導法が実を結んで来た。

 「サーシャ(愛称)コーチのメソッドは、剣を円軌道で動かして相手の剣をコンタクトして外し、コースを開けてその間に突きに行く。相手の剣をコントロールするところに重きを置いている。日本に最初入ってきたのは、フランスのメソッドで、剣を針の穴に糸を通すようなイメージ。相手の剣を受け、直線をぶらさなければ最短でそのまま突ける。剣を外すとその分の時間が余計だが、フランスの場合は剣を真っすぐという教え方をする。かなり極端なアプローチの違いがあるので、ここ10何年間、下の世代に教えてきた。今では、これを知らないと勝てない時代になっている」

 努力が結実し、2大会連続で登った表彰台。五輪のメダルという価値の大きさを、現在フェンシングの普及活動も行う宇山さんは、引退後に感じている。そして後輩達には、更なる活躍を願っている。

 「フェンシングの普及のイベントなどに行けば、メダルを見たい、触りたいという人や、メダルを取ったという話に感情を動かしてくれる人が想像の50倍、いや100倍はいた。東京五輪を通じて応援してくれた人には、まだ恩を返しきれていないと感じており、フェンシングをより身近に感じてもらえるよう活動している。今後、普及の面でも選手には頑張って欲しい。そしてこれまで培ってきた技術を、次世代につなげていきたいと思っています」

この記事の関連ニュース