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「妄想を実際にやり遂げる力がある」トランポリン西岡隆成、まさか予選落ち 次こそ悲願達成へ、伊藤正樹コーチが語る…パリ五輪

スポーツ報知 2024年8月3日 11時0分

◆パリ五輪 第8日 ▽トランポリン男子(2日、ベルシー・アリーナ)  

 初出場で、23年世界選手権メダリストの20歳・西岡隆成(近大)は予選で2本ともにミスが出て敗退。決勝進出はならなかった。

 日本トランポリン界初の表彰台を目指したメダル候補は、まさかの結果に「決勝にも残れない中で、一体何してたんだろうなと。無駄ではないと思っているんですけど。応援してくださっている方にもすごい申し訳ないなと思っています」と言葉を絞り出し、4年後への“リベンジ”へ「結果は受け止めて、次の五輪に生かして行ければいいかなと思う」と語った。

 西岡を指導するのが、五輪2大会出場の伊藤正樹コーチ。全日本優勝3度を誇り、日本のトップを走り続けてきた。自身は2012年ロンドン五輪4位、16年リオ五輪6位と入賞するも、表彰台には届かなかった。引退後は指導者に。トランポリン界の未来のためにも「早く日本がメダルを取らないといけない」。その可能性を秘めた選手こそが西岡だった。

 ジュニア時代から国内大会で優勝し、伊藤コーチも存在は知っていた。「『難しい技をする子』というくらいで荒削りだった。正直、すごい将来性を感じたわけではなかった」。16歳で迎えた2020年全日本で西岡は初優勝。「極端な話、(ドラゴンボールの)精神と時の部屋に入ってたんじゃないかと思った」。突然の覚醒に驚かされたという。

 伊藤コーチは、西岡について「秀でてはない。ズバ抜けて筋力がある、美しい、柔軟性があるということでもない」というが、総合的な実力の高さが武器と見る。「全ての要素がうまくバランスよくはまっている。逆になぜできるのか分からない。不思議」。その才能は、言葉では表現しきれない。

 強みは「難度」と「メンタル」。西岡は21年世界選手権で3回宙返り7本を入れ「難度点世界記録」(18・9点)を樹立。銀メダルを獲得した。「妄想レベルの構成を実際にやり遂げる力がある。持っている技を全部入れるって普通は無理だが、それが彼はできる」。

 男子選手はビル3階ほどの高さまで跳び、着地にかかる衝撃は1トンとも言われる。高難度の技を増やす程それだけけがや中断のリスクも上がる。「トランポリンはまず、10本通さないと話にならない。僕も含めて日本人は守備的な意識を持ってしまいがち。だが、隆成は大事な大会を高難度で勝ちに行くようなやつ」。西岡は頭に「安全策」という言葉はない。「五輪には向いてるメンタルの持ち主」。大舞台であればあるほど、力を発揮してきた。

 過去、日本男子が何度も阻まれ続けてきた五輪の壁。五輪最高は4位が3度。「隆成クラスが次、出てくるかと言われると、ちょっと難しい。日本としてもこのチャンスは必ず取らないといけない」。思いを託した教え子とともに、挑戦は続く。

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