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爪あと残したバスケ男子日本代表 「日常を世界基準に」から進化 佐藤トレーナー「Bリーグの功績は非常に大きい」

スポーツ報知 2024年8月3日 15時20分

◆パリ五輪

 バスケットボール男子で、世界ランク26位の日本は、2日に行われた1次リーグB組最終戦で同12位のブラジルに84―102で敗れ、3連敗。前回の21年東京五輪に続き、3戦全敗で大会を終えた。史上初の「8強入り」を掲げた“史上最強”ホーバス・ジャパンの挑戦が終わりを告げた。

 不戦勝を除き52年ぶりの五輪1勝、そして目標には届かなかったが、23年W杯王者のドイツ戦は第3クオーター(Q)まで互角に張り合い、前回銀メダリストのフランス戦は、八村が途中退場も「大金星」にあと1歩まで迫り、確かな爪あとを残した。

 バスケットボール全カテゴリーの日本代表を担当する佐藤晃一アスレティックトレーナー兼スポーツパフォーマンスコーチが、48年ぶりに自力で五輪に出場した男子日本代表の変化を語った。

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 佐藤氏は、NBAのウィザーズに5年間、リハビリテーション・コーディネーターを務め、ティンバーウルブスでも3年間、トレーニング指導も行うスポーツパフォーマンスディレクターを務めた。バスケットボール日本代表に関わるようになったのは2016年から。東野智弥・技術委員長に声をかけられたことがきっかけだった。

 佐藤氏が日本チームに加わった16年、男子日本代表はどん底にいた。同年リオ五輪の予選で敗退し、10大会連続で出場権を逃した。16年秋、佐藤氏が日本代表戦を見て最初に感じたことは「純粋に遅い」。最高峰NBAを見て来た佐藤氏にとって、その差はすさまじく、世界との距離感はほど遠いものだった。

 トレーナーという立場から見ても、日本男子の大きな転換期の一つはBリーグの開幕だったと語る。プロリーグへと生まれ変わり「選手自身が、自分の体に投資するというマインドセットは雲泥の差だと思う。プロなので、選手達は自分の体の面倒もちゃんと見なきゃいけないし、成果を上げるためにトレーニングしないといけないという意識が当たり前になってきた。僕の立場からも『(世界レベルでは)このくらいやるのは当たり前だよ』というのは選手に伝えた。Bリーグの功績は非常に大きい」。

 代表においても、大きな変化が見られるようになった。佐藤氏によると、最も顕著な変化は「激しさ」。今は練習中に「怪我させるな」というコーチの声が飛び交っているという。それほど、各選手が練習中から高いインテンシティー(強度)を発揮。「毎回毎回、激しさは増していっている。そういう選手が集まっている」。

 23年W杯前、NBAのシーズンを終え合流した渡辺雄太(29)=千葉J=は「昔から日本は練習が緩いなと感じていたが、今はそんな心配をする必要が一切ない」と言った。Bリーグでの日常で選手たちの基準が上がっていることも大きいと佐藤氏。「耐える力が上がっているのかもしれない。そういうのが当たり前になっている」。

 「日常を世界基準に」を掲げてきた日本男子バスケ界。リオ五輪以降、Bリーグが幕を開け、日常のレベルが上がった。またNBAプレーヤーもレイカーズの八村塁、日本人最長6季プレーした渡辺雄太の2人も誕生。米ネブラスカ大を卒業した富永啓生を始め、海外挑戦する若者も増えた。世界に全く歯が立たなかったかつての姿はもうない。

 ようやく目に見えて、注目を浴びるようになったのは、23年W杯だった。史上初の3勝を挙げ、W杯過去全敗だった欧州勢からも初白星。48年ぶりの自力での五輪出場を決めた。また2月のアジア・カップ予選では国内組で88年ぶりにアジア最大のライバル・中国を下した。その進化は目に見えて結果として現れている。世界基準の日常が、日本を強くした。

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