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「こういう結果になって、情けない」斉藤立5位…亡き父・仁さんとの約束は同じロス五輪の舞台で親子制覇へ

スポーツ報知 2024年8月3日 22時30分

◆パリ五輪 第8日 ▽柔道(2日、シャンドマルス・アリーナ)

 男子100キロ超級の斉藤立(22)=JESグループ=は準決勝で世界ランキング1位の金民宗(韓国)に一本負けし、3位決定戦も敗れて5位だった。95キロ超級で1984年ロサンゼルス、88年ソウル五輪を2連覇した父・仁氏(享年54)と親子2代での五輪制覇に届かず。4年後の雪辱を誓った斉藤の覚悟を柔道担当の林直史記者が「見た」。

 斉藤は亡き父との誓いをパリで果たすことはできなかった。「この五輪に懸けた思いは段違いだった。こういう結果になって、情けない気持ちでいっぱい。日本に帰れない」。3位決定戦に敗れて涙する姿に、背負った重圧の大きさを感じた。

 父の偉大さを知ったのは別れの後だった。中1の1月。病床の父の手を握って、最後に誓った。「俺、頑張るから。絶対に五輪に出るから」。だが、しばらくは現実を受け止め切れなかった。翌月、講道館で育成年代の合宿に参加した。父の教え子のコーチたちから話を聞くうち「お父さんってすごかったんや」。急に悲しさがこみ上げ、トイレに駆け込んで号泣した。「絶対強くなる。俺は恩返しするんだ」。嫌いだった柔道に本気で向き合う決意が固まった。

 中2の夏。不思議な体験をした。夢に父が出てきた。練習前、「喉渇いただろ。これ飲んで、頑張れ」とお茶のペットボトルを渡された。起きた時にはすっかり忘れていたが、少したった後の近畿大会。会場の前に1つだけあった自販機は同じ銘柄のお茶以外が全て売り切れ。購入ボタンを押して手に取った瞬間「夢を全部思い出した。絶対頑張る」。その大会は3位。「当時の自分の中ではうれしくて、自信を持てた」と、背中を押してくれる結果となった。

 試合後、父への思いを聞かれた。「自分が」と話し出すと、声を詰まらせた。18秒の沈黙の後、「お父さんと約束したのは優勝だった。4年後、ロスで絶対何が何でもやってやる」。覚悟がにじんだ表情と言葉に、同じロス五輪の舞台で親子制覇を成し遂げると確信した。そして、父もその挑戦を天国から応援してくれているはずだ。立、これ飲んで頑張れ―と。

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