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「五輪は個人戦と団体戦をタフに戦える選手を選ぶ必要がある」アトランタ金の中村兼三氏が日本柔道に思うこと…パリ五輪

スポーツ報知 2024年8月4日 8時0分

◆パリ五輪 第9日 ▽柔道(3日、シャンドマルス・アリーナ)

 柔道混合団体が行われ、日本は決勝で地元のフランスと激突。3―3で突入した代表戦で斉藤立(JESグループ)が“絶対王者”テディ・リネールに敗れ、2大会連続の銀メダルとなった。アトランタ五輪金メダリストの中村兼三・旭化成総監督は試合を振り返り、日本柔道の課題を探った。

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 柔道競技の最後を締めくくる混合団体戦決勝で、日本はフランスに競り負けて銀メダルとなった。ゴールデンスコアの代表戦は立とリネールが戦ったが、本戦でも立に延長戦の末、一本勝ちしていたリネールは、ここでも指導狙い。それでも、立の柔道が雑になったと見ると、立ち技でもいけると戦法を変えてきた。

 立は序盤は高い位置で持てなかった釣り手が後半、持てるようになったものの、引き手をしっかり取れなかった。だから、体落としをかけても前のめりに滑って、偽装攻撃に見えてしまう。大内刈りで追うとか、内股で浮かせるようにするなど、状況を判断して、かける技を変えていかないといけない。リネールも、女子のアグベニューも、どう相手を仕留めるかと試合中に考えながら戦法を変えていた。

 決勝は、先鋒(せんぽう)の村尾三四郎(JESグループ)がキッチリ白星を取り、高山莉加(三井住友海上)が大金星を挙げたが、阿部一二三(パーク24)は競り負けた。(鼻出血の)治療で休憩に入った時に、フランス選手の方が体力を回復させたようだった。釣り手を絞りながらも引き手がなかなか持てず、技が単調になった。今回の相手は一つ上の階級だったが、今後、フィジカル的に強い相手はあの形で来るだろう。引き手と襟を持って、技をつないでいくことが大事だ。

 団体戦で活躍が光った村尾は、一本取れる技を持っている。相手の体力がなくなった時にはキッチリ仕留めていた。やはり、一本を取れる技を身につけないといけないと改めて思う。良い勝負をしても、勝ち切れないと次にはつながらない。日本柔道はそうして勝ってきた。どういう状況でも勝つということを、改めて課題としてやっていくべきだろう。

 絶対的な強さを身につけるためには、練習量をこなすこと。練習量を増やすとケガにつながる可能性も指摘されるが、練習をやり込んでいる選手は、やはり強い。私も一番強かった時は練習ができていた。効率的だったり、科学的な練習も重要だが、ギリギリの勝負所においては、それだけで勝てる競技ではない。色々なことを経験し、逆境の中でも力を出すことを考えることは必要だと私は思う。加えて、これからの五輪では、個人戦と団体戦をタフに戦える選手を選ばないといけないのかもしれないと感じた大会だった。(1996年アトランタ五輪男子71キロ級金メダル、旭化成総監督)

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