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「五輪ってどんなところ?」8年越しで助言をかなえた江村美咲 父が明かす「完璧主義者」がたどり着いた銅メダル…パリ五輪

スポーツ報知 2024年8月4日 9時0分

◆パリ五輪 第9日 ▽フェンシング(3日、グランパレ)

 フェンシング女子サーブル団体3位決定戦で日本は開催国フランスに45ー40で勝利し、銅メダルを獲得。五輪のサーブル種目で日本勢初の快挙を成し遂げた。競技の母国フランス相手に完全アウェーの中、高い集中力で勝ちきった。日本は開会式で選手団の旗手を務めた江村美咲(立飛ホールディングス)が最後に勝負を決めた。江村の父・宏二さん(63)が娘が歩んだメダルまでの道のりを語った。(大谷 翔太)

 江村のフェンシングとの出会いは幼稚園。太田雄貴氏が銀メダルを獲得した北京五輪で日本代表監督だった父・宏二さん(63)が、大分・日田市でクラブを開校。そこに兄2人も通い、父と遊びたい江村もついていった。自然と、剣は手に。宏二さんは「まずは練習場に来たいと思うように」と強制はせず、娘の気が向いた時に集中して基礎を教えた。特段、運動神経がいい方ではないが「学童に迎えに行くと、雲底や登り棒を血で手が真っ赤になるまでやっていた」と宏二さん。好きなことには、没頭する性格だった。

 好きな事は突き詰める、自他共に認める「完璧主義者」。フェンシングは父に似て「練習してなんぼ」な性格だった。中大時代は、朝6時のランニングから、練習後寮に戻ってきてもそこから10キロ走る生活。節制して早く寝て、宏二さんも「やれることは全部やってきた」と言う程の練習を積んでいた。だからこそ、21年東京五輪で個人、団体共にメダルを逃した後は「初戦で負けたみたいな様子で帰ってきた」。江村は「これ以上何をしたらいいんだろう」と燃え尽き、フェンシングから少し心が離れた。そんな娘も、そっと見守った父。ジェローム・グースコーチに相談し、休息。髪の毛を現在の金髪にしたのも、この頃だった。

 相談されることは多くないが、東京前に一度「お父さん、五輪ってどんなところ?」と聞かれたという。自身の経験を踏まえ、普段目にしないモノが飛び込んでくること、練習会場では他国の選手が強く見えてしまうことなどを伝えた。「自分がベストで臨むだけ。自分の力を出し切って、結果はあとからついてくる。メダルメダルって、気にしない方がいい。と話しました」。8年越しに、父の助言を体現できた。

 今では、娘は何よりの誇りだ。宏二さんは江村について「雲の上の存在」という。「私たちの時代は、例えばW杯に行って決勝に行けたらいいなという、そういう夢物語。今、自分ができなかったことを美咲が一つ一つ登っていっているのは、私の限界を超えて、その上に行ってくれてるっていうのは私にとっても誇りですし、モチベーションにもなる。江村の名前が活躍してくれると、世界中の仲間から連絡が来るんです」と、うれしそうに語る。

 22、23年は世界選手権個人で2連覇。そしてパリでは、サーブル初の団体メダル獲得に貢献した江村。今大会は、開会式の旗手という大役も務めた。宏二さんが「このチャンスをものにしてほしいという思いもあるけど、心配もしています。やってみなきゃ分からないけど、やってくれると思います」と、親心をのぞかせながらエールをおくっていた大舞台。銅メダルという堂々たる結果で、恩返しをした。

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