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松本幸四郎、京極歌舞伎「狐花」初日迎え「暑さより、もっと熱い舞台を」京極夏彦氏も太鼓判「見事に小説の行間を埋めてくれた」

スポーツ報知 2024年8月5日 0時0分

 歌舞伎俳優の松本幸四郎が4日、初日を迎えた東京・歌舞伎座「八月納涼歌舞伎」(25日・千秋楽)の第3部「狐花 葉不見冥府路行(きつねばな はもみずにあのよのみちゆき)」に出演した。

 ミステリー界の巨匠、京極夏彦氏が初めて歌舞伎を書き下ろす謎解き物語。幸四郎が演じる中禪寺洲齋は「百鬼夜行」シリーズなどでおなじみの京極堂こと中禅寺秋彦の曽祖父にあたる人物だ。

 物語は呪詛(じゅそ)を生業とした信田家当主の妻・美冬(市川笑三郎)に横恋慕した上月監物(中村勘九郎)らが信田家の一族郎党を皆殺しにした残虐な事件から始まる。事件から25年後、監物の娘雪乃(中村米吉)、近江屋の娘登紀(坂東新悟)、辰巳屋の娘実祢(中村虎之介)、そして上月家女中お葉(中村七之助)の周囲には、彼岸花を染め抜いた小袖を着た謎の男・萩之介(中村七之助)が登場する。

 いくつもの謎をはらむ幽霊事件を解き明かすべく、「憑き物落とし」を行う武蔵晴明神社の宮守・中禪寺洲齋(幸四郎)が監物の屋敷に招かれる。劇中では鮮やかな赤の曼珠沙華の花が物語の重要なモチーフとして登場し、「死人花」「墓花」「彼岸花」「蛇花」「幽霊花」「火事花」「地獄花」「捨子花」「狐花」と、曼珠沙華の別称で章立てされ、歌舞伎座の舞台を印象的に彩った。

 幸四郎は「京極さんの作品は、小説でありながら、優しく、怪しく、艶っぽい音楽が聞こえてくるような感覚があります」と話す。初日を観劇した京極氏は「小説は書かれていないところこそが大事。読者が小説の行間や紙背(しはい)をいかに生み出すか。一方で、歌舞伎を含めた演劇というのはそこをどう作るか。舞台づくりは役者さんと舞台を作られるみなさんに全幅の信頼をおいて一任していましたので、本日拝見して、見事に小説の行間を埋めて紙背を描いてくださっていたと思います」とコメントした。

 新たな歌舞伎のジャンルとして「京極歌舞伎」が誕生した瞬間を目撃した観客からは、割れんばかりの拍手が送られた。幸四郎は第1部「鵜の殿様」、第2部「梅雨小袖昔八丈 髪結新三」にも出演。開演前の劇場前イベントでは「この暑さより、もっと熱い舞台が歌舞伎座にあります。毎日、すべてを出し切ってまいります」と語った。

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