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「サニブラウンは決勝に行くためには常に…」超高速決着の男子100Mを元日本記録保持者の青戸慎司氏が解説…パリ五輪

スポーツ報知 2024年8月5日 6時44分

◆パリ五輪 第10日 ▽陸上(4日、フランス競技場)

 男子100メートル決勝が行われ、ノア・ライルズ(米国)が9秒79(追い風1・0メートル)で金メダルを獲得した。五輪史上初めて9秒台をマークしても準決勝で敗退するというハイレベルな争いを勝ち抜いた8人による決勝を制し「世界一速い男」の称号を得た。キシェーン・トンプソン(ジャマイカ)が同タイムの9秒79で銀メダル。フレッド・カーリー(米国)が9秒81で銅メダルを獲得した。21年東京五輪金メダルのラモント・マルチェル・ヤコブスは9秒85で5位。8位のオブリク・セビル(ジャマイカ)でも9秒91の超高速決着となった。

 日本期待のサニブラウン・ハキーム(東レ)は準決勝第3組で自己新記録で日本歴代2位の9秒96をマークしたが、4着で決勝進出を逃した。

 男子100メートル元日本記録保持者の青戸慎司氏(57)は「ライルズは準決勝では余裕を持って通過し、決勝で集中力を高めた」と勝者の地力に着目した。準決勝で惜敗したサニブラウンについては自己ベスト記録の更新を称賛した上で、決勝進出のためにもう一段階の成長を期待した。全体的なレベルアップの要因としてはスパイクシューズの進化を挙げ、その性能を生かすための技術の重要性を説いた。

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 準決勝で9秒台を出しても決勝に進めない。全体的なレベルが上がっている。

 準決勝と決勝の間は、約1時間半しかない。

 金メダルを獲得したライルズは底力があった。準決勝はフィジカルもメンタルも余裕を持って9秒83の2位で通過。決勝で集中力を高めて、タイムを上げて、ハイレベルな戦いを制した。また、普段から1~2時間の短い間隔で、実戦並みの好タイムを2本そろえる練習を積んで、五輪に向けた準備しているのだろう。

 五輪の準決勝という大舞台で、自己ベスト記録を出したサニブラウンは、素晴らしかった。ただ、五輪の決勝で戦うためには、もう1段階、レベルアップしなければならない。本人も語っていたが、終盤にオーバーストライド気味となってしまったことは惜しかった。フォームとメンタルは連動しており、焦ると気持ちが前に行きすぎてストライドが大きくなってしまう。ストライドが大きくなると、接地でブレーキがかかるので、スピードが落ちる。競り合いになった時でも平常心を保つことが重要だ。

 サニブラウンはまだ25歳と若いので、成長が期待できる。自己ベストは9秒8台に伸ばし、その上で、強い向かい風でない限り、どんなレースでも9秒台でまとめる地力をつけてほしい。

 五輪初出場の坂井隆一郎と東田旺洋は、五輪の厳しさを知ったと思う。五輪と世界陸上は、やはり、雰囲気が違う。二人には硬さが見られた。

 400メートルリレーのメンバーは分からないが、坂井、東田はレースを1本走ったことで落ち着いて走れるだろう。100メートルは100メートル、リレーはリレーと割り切って、自分の仕事に徹してほしい。リレーメンバーに入っている桐生祥秀は経験があるので、リーダーシップを発揮して、チームを引っ張ることを期待したい。

 最後に。全体的なレベルアップの要因のひとつとしてスパイクシューズの進化がある。私が日本記録(10秒28)を出した時(1988年)と比べると、0秒1~2はスパイクシューズによる差があると感じる。現在、トップ選手が履くスパイクにはほとんどカーボンが入っており、反発力が増している。今後、さらに進化は続くだろう。スパイクの性能を生かし切る技術が必要だ。(男子100メートル元日本記録保持者、中京大副部長)

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