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牛小屋を改装した土俵から五輪へ 「普通の子」がレスリング世界ランク1位になるまで

スポーツ報知 2024年8月6日 11時0分

 レスリング男子グレコローマンスタイル77キロ級で初出場の日下尚(23)=三恵海運=が6日から登場する。この階級では日本勢で初めて世界ランキング1位となり、第1シードとして臨む。飛躍の鍵となったのが“相撲スタイル”だ。小中と相撲を指導した黒田道場の黒田良治氏(69)がレスリングと相撲の共通項を明かした。

 日下の強みは土俵で磨かれた。日本が勝てなかった階級で世界のトップに躍り出た23歳は「『下から上』という力の方向の基本を相撲で教えてもらった。相撲の形はすごく意識している」。小中と学んだ相撲の基本が、レスリングに生きていると実感している。

 黒田氏が自宅の牛小屋を改装して土俵を作り、地域の子どもたちに相撲を教えていた。日下が通う高松レスリングクラブの竹下敬監督(57)に紹介され、声をかけたのは小学1年の時だった。稽古は毎週土曜日に午前9時から2時間。8人乗りのワゴンで子どもたちを迎えに行き、稽古後は大鍋に40人前のちゃんこうどんを作って振る舞い、風呂にも入れて送り届ける。月謝は無償だった。

 当時は体の線も細く、運動能力に優れていたわけではなかった。「誰も五輪に行くなんて想像していなかった。おとなしくて、本当に普通の子だった」という。

 道場では2時間の稽古のうち、四股とすり足の基本練習が40分。レスリングと並行して9年間地道に取り組み、中学では体重60~70キロ程度だったが、100キロを超える相手にも粘れるようになった。3年時には団体戦の全国都道府県大会で香川県勢初の16強入りに貢献。相撲で将来性も感じるようになったが、高校ではレスリング一本を選択した。

 黒田氏は日下を指導するようになり、レスリングの試合を映像で研究するようになった。「グレコローマンは限りなく四つ相撲に近い。すり足で押していく形。頭の当て方。足腰の構え方。土俵際での粘りや体幹も鍛えられたと思う」。道場で培った“相撲スタイル”を世界で発揮することを願った。(林 直史)

 ◆日下 尚(くさか・なお)2000年11月28日、香川・高松市生まれ。23歳。3歳でレスリングを始め、高松北高、日体大を経て、23年4月に三恵海運入社。19年明治杯全日本選抜選手権の72キロ級でグレコ史上最年少の18歳6か月19日で優勝。20年末から77キロ級に上げ、22年にU23世界選手権3位。23年世界選手権3位。24年アジア選手権優勝。172センチ。家族は両親と弟2人、妹。

 ▼日下(レスリング・グレコローマンスタイル77キロ級)の日程

6日18時30分~ 1回戦

  19時50分~ 準々決勝

7日1時15分~ 準決勝

  18時0分~ 敗者復活戦

  2時30分~ 3位決定戦

  2時55分~ 決勝

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