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フェンシング日本男子フルーレのルペシュー・コーチはフランス代表で5大会連続五輪出場 金導いたレジェンドの“神タクト”…パリ五輪

スポーツ報知 2024年8月5日 22時33分

◆パリ五輪 第10日 ▽フェンシング(4日、グランパレ)

 4日の男子フルーレ団体決勝で、日本(敷根崇裕、飯村一輝、松山恭助、永野雄大)が過去優勝7度のイタリアを45―36で下して優勝した。史上初の金メダルを獲得し、フェンシングの母国・フランスで今大会メダル5個と躍進。日本剣士が、最高のフィナーレを飾った。21年東京五輪でフランス代表として金メダルを獲得し、五輪後から男子フルーレを指揮するエルワン・ルペシュー・コーチ(42)が“神タクト”で日本を栄冠に導いた。

 歓喜の両拳を突き上げたのは、日本の侍たちだった。フェンシングの母国・フランスで行われた五輪最終種目。男子フルーレ団体が、史上初の金メダルを獲得した。過去優勝7度のイタリアに、45―36で完勝。主将の松山は「この6日間は全く生きた心地がしなくて。3日間連続でメダルを取って、メダルを取らないと日本に帰れないなと。そこから逃げず自分もチームも立ち向かった。勝った以上にそのプロセスを褒めたい」。日本5個目のメダルは金。世界ランク1位で迎えた大会で力を見せつけた。

 準決勝は前回王者のフランス。完全アウェーの中、45―37で圧勝した。迎えた決勝。ルペシュー・コーチが“神タクト”を振った。決勝の約1時間前。控えの永野の起用と、最年少20歳の飯村をアンカーとして今大会個人で銀のマリーニにぶつける采配に出た。永野は35―34の第8ゲームから、驚異の5連続得点。飯村も4連続得点で一気にマッチポイントを握り、勝ちきった。「勝った瞬間は、五輪王者という自覚はなかった。素晴らしい勝利に、選手を思ってうれしい気持ちになった」とルペシュー氏。国をまたぎ選手、そしてコーチとして“2連覇”の偉業だ。

 東京五輪後、フランス代表で5大会連続五輪出場のレジェンドとして来日したルペシュー氏。最初に覚えた日本語は「大丈夫」だった。「実力通りやれば、五輪王者になれる可能性を秘めている」。精神状態がパフォーマンスに大きく影響するというフェンシングで、まずは選手に自信を植えつけた。「彼が就任してから、一度も否定されたことがない」と松山。ミスをしても「なぜできなかった」とは言わない。「練習でやってきたことをやろう」。常に自分にベクトルを向ける言葉をかけた。

 現役五輪王者の存在も、選手にとって大きな刺激になった。松山は言う。「何か特別なことをやって金メダルを取ったのかなと思ったら、細かいところに気を配って、そこに全力で集中して、高い強度で練習していた」。世界一へ、最短ルートは日々の積み重ね。凡事徹底の大事さを、レジェンドから学んでいた。

 太田雄貴氏から紡いできた男子フルーレの系譜。“お家芸”復活は、黄金時代到来の象徴となった。「あくまで僕の目標は、オリンピックチャンピオンになることではなく世界一のフェンシングプレーヤーになること。これはその過程。引き続き、ハードワークしていけたら」と松山。フェンシング大国ニッポン誕生へ。若き剣士たちが、歴史の扉を開いた。(大谷 翔太)

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